りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006-12-17から1日間の記事一覧

派兵の代償(トマス・E・リックス)

2004年のアフガニスタンからストーリーが始まります。アフガンゲリラをアメリカ軍が補佐しているというのが奇妙ですが、本書は9.11以前に書かれた作品でした。 「近未来」って、すぐに到来しちゃうから危険ですね。世界情勢や科学技術の前提が大きく…

ザ・インタープリター(ディビッド・ジェイコブズ)

ニコル・キッドマン主演で、映画化されました。映画の原作を読むのも、結構好きなのです。 彼女が演じるのは、国連通訳のシルヴィア。国連で偶然、「ある国の大統領暗殺」の陰謀を聞いてしまうんですね。その国とは、民族虐殺の嵐が吹き荒れているアフリカの…

スターウォーズ・エピソード2(R.A.サルヴァトア)

いよいよ「エピソード3」が公開されます。復習のために、こんな本を読んでみました。ストーリーは、映画「エピソード2」と一緒。映画の原作として書かれた本だから、当然です。戦闘シーンの迫力や、非人類宇宙人の描写などは、映像にはるかに及ばないのも…

回天の門(藤沢周平)

藤沢周平さんの渋い時代劇が、最近続けて映画化されました。「たそがれ清兵衛」と「隠し剣・鬼の爪」。どちらも秀作ですe。 ということで、借りてみたのが本書です。維新の志士たちが活躍する「幕末」のちょっと前の時代に「倒幕」の旗印をかかげ、更には幕…

ラッシュライフ(伊坂幸太郎)

「だまし絵」で有名なエッシャーの作品に、「城の階段を登っている兵隊が一周すると元の位置に戻っている」というものがあります。本書の表紙にもなっていますので、興味ある方はじっくり眺めてみてください。 この本は、エッシャーのだまし絵のように、「並…

水滸伝17(北方謙三)

2ヶ月ごとに発売されるシリーズも、ついに17巻まできました。長い、長すぎるぞ~! そろそろ毎回の感想書くのも飽きてきました。気になるから、最後まで読みますけどね。 今回は、禁軍の総帥・童貫将軍が、ついに対梁山泊戦に出馬。強い! 梁山泊は、偽の…

ぼくは行くよ(ジャン・エシュノーズ)

出版社からのレビューは次の通り。 女たらしの中年画廊経営者フェレール。妻とは離婚し共同経営者は失踪。北極の平原へと古美術品探しに向かうが・・。何ひとつ明白でない粋でしらけた、おかしな世界。ゴンクール賞受賞作。 実は、全然つまらなかった。内容…

本格小説(水村美苗)

この時代にあえて「本格小説」なんて挑戦的なタイトルをつけて、『嵐が丘』をモチーフにした大河小説を書いた著者の真意はどこにあるのでしょう。本書の読者は、作者が投げかけた「純文学こそが最高のエンターテインメントだ」という主張の検証を求められて…

グラスホッパー(伊坂幸太郎)

犯罪者しか登場しない「伊坂ノワール」です。 妻をひき逃げされた復讐のため非合法組織に潜入した「鈴木」・・というとカッコいいけど、実際はど素人。正体が割れそうになって絶体絶命の鈴木の目の前で、なんとひき逃げ犯人であった、組織の御曹司が交通事故…

重力ピエロ(伊坂幸太郎)

重いテーマなのに、会話が軽妙なところがいいですね。村上春樹にも似た「上質な軽さ」を感じます。 泉水と春は異父兄弟。ある日、泉水の勤める遺伝子診断会社が放火されます。落書き消しを仕事にしている春は、連続放火と謎の落書きの関係に気付き、兄弟で放…

彼方なる歌に耳を澄ませよ(アリステア・マクラウド)

カナダ好きの友人と話していたら、カナダの本を読みたくなりました。本書は、カナダに移住したスコットランド・ハイランダー一族の物語。18世紀半ば、12人の子供たちと一匹の茶色い犬を連れて、一族の祖「キャラム」は、カナダ東端・ケープ・ブレトン島…

文学賞メッタ斬り(豊崎由美、大森望)

去年3月の出版ですから「ギター侍」とは関係ないはずです。『百年の誤読』の豊崎姉さんと、「下読みの帝王」大森さんのコンビが、芥川賞、直木賞をはじめ、50を越える国内小説賞を「メッタ斬り」です。 あらためて思うのは「小説賞は本を売るための手段」…

凍りついた香り(小川洋子)

「調香士」の彼が、突然自殺してしまった。存在も知らなかった彼の弟と会い、聞かされていた彼の経歴は、ことごとく嘘だったことを知ってしまいます。 さぁ、どうする? 彼女の場合は、彼の「真実の姿」をたどる旅をはじめるのです。それは彼の死を受け入れ…

バルカン・エクスプレス(スラヴェンカ・ドラクリッチ)

著者者はクロアチアの女性ジャーナリスト。旧ユーゴ解体直後の、クロアチア・セルヴィア内戦と、それに続くボスニア・ヘルツェゴビナ内戦の時代に、迫り来る戦争の恐怖を書いたエッセイ集です。 たとえば、戦争はこのように始まるのです。「人種間の争いで、…

ドリームバスター1・2(宮部みゆき)

宮部ファンタジーには偏見がありましたが、これはおもしろい。表紙のイラストも展開もアニメのようですが、ファンタジーに「飛ぶ」前の普通の生活の描写がいいですね。 ある文明世界から、精神だけの存在になって逃亡した死刑囚たち。彼らは地球で人間の夢に…

くらやみの速さはどのくらい(エリザベス・ムーン)

35才のルウは自閉症患者だけど、パターン認識能力は天才的。応用数学者として製薬会社に勤め、自立した生活を送っている。しかし決まった手順から踏み外れると混乱してしまうし、人付き合いができないから好きな彼女にも打ち明けられない。もちろん自閉症…

ミリオンダラー・ベイビー(F.X.トゥール)

昨年のアカデミー賞を総なめにした映画の原作です。映画を見に行けそうもないので、読んでしまいました。今年の夏は「SWエピソード3」と「宇宙大戦争」を見なくてはいけないのです。^^ 映画の宣伝そのままに、老トレーナーは「クリント・イーストウッド…

荊の城(サラ・ウォーターズ)

前作『半身』で読者を不思議な世界に引きずりこみ、一転しての意外な結末で完全に意表を衝いてくれた、名手・サラの第2弾です。 舞台は『半身』と同じ19世紀のイギリス。ロンドンの下町でスリとして暮らす少女スウに持ちかけれらた計画は、ある令嬢が相続…

秘密(東野圭吾)

バスの転落事故で、妻・直子は死亡し、娘・藻奈美は意識不明。意識を取り戻した娘の身体に宿っていたのは妻の「心」でした。そして実際は夫婦である、父と娘の「秘密」の生活が始まります。 セックス問題こそは未解決のままでしたが、奇妙な「秘密」の関係は…

ユグノーの呪い(新井政彦)

主人公は「ヴァーチャル記憶療養士」なる不思議な職業。それは、デジタル化された患者の心に入り込み、トラウマなどの精神障害と対決する治療を行う専門家。治療の済んだ「心」を患者にダウンロードして治療完了。 ウィリアム・ギブソンが『ニュロマンサー』…

安政五年の大脱走(五十嵐貴久)

ラナさんが紹介してくれた本。この話は「恋に狂う井伊直弼」を悪役にもってきた段階で成功してますね。面白かったですよ。 大老・井伊直弼が小藩の美姫に妄執を抱き、彼女の心を手に入れるために仕掛けた陰謀。それは、藩士たちを人質に取って、彼らの命と姫…

デセプション・ポイント(ダン・ブラウン)

『天使と悪魔』と『ダ・ヴィンチ・コード』の著者が、その2冊の間に著わした作品です。古代から連綿と隠されてきた秘密に題材をとった2冊と異なり、本書が扱っているのは「現代の陰謀」。底が浅い題材で奇を衒えない分、ストーリー展開力が問われますね。 間…

ミドルセックス(ジェフリー・ユージェニデス)

エイミ・タンにしろ、ジュンパ・ラヒリにしろ、アメリカに移民したマイノリティの話は、どうしてこんなに胸を打つのだろう。 カリオペは、ギリシャ人移民の3世。女の子として生まれ育ちながら、14歳になって「実は男性」と判明。「性差」も「国籍」も飛び…

霧笛荘夜話(浅田次郎)

この人の本、最初に読んだ『蒼穹の昴』が良かったのと、ハチャメチャな『プリズンホテル』シリーズが楽しかったので、つい読んでしまうのですが、最近はイマイチですね。『壬生義士伝』や『輪違屋糸里』の幕末ものでは、まだ、「泣かせの浅田」の本領を発揮…

泣き虫弱虫諸葛孔明(酒見賢一)

酒見さんのデビューは、第1回ファンタジーノベル大賞の『後宮小説』。中国の架空の王朝に入宮した田舎娘「銀河」が、慣れない宮廷生活にとまどいながらも、正妃の座を射止め、反乱軍による王朝滅亡の危機に際して大活躍する、爽やかストーリー。 孔子の儒教…

嫌な女を語る素敵な言葉(岩井志麻子)

志麻子さん、最近ではバラエティなどにも時々出て、シモネタなんぞを豪放に言い放ってらっしゃいますが、「毒の強さ」がステキなキャラのアネゴです。ホラーは苦手ですが、彼女のキャラに釣られて『ぼっけぇきょうてぇ』と『岡山女』は読んでしまい、その夜…

貴婦人と一角獣(トレイシー・シュバリエ)

パリのクリュニー美術館にある、中世美術の最高傑作といわれる6枚の連作タピスリー「貴婦人と一角獣」の制作をめぐるドラマを小説仕立てにしたもの。もちろん、作者の創作です。この作家は『真珠の耳飾の少女』という作品も表わしており、美術品から連想し…

となり町戦争(三崎亜記)

ある日突然、自分の町が隣町と戦争を始めたことを回報で知らされ、戦争の実感もないのに人口統計上の「戦死者」は増えていきます。偵察員に選任されて役場の女性と偽装結婚して隣町に引っ越してからも、逃亡を指示されて「何か戦争のようなもの」とすれ違い…

風の谷のナウシカ(宮崎駿)

ある本を読んでいて思い出したら、懐かしくなって読み返してしまいました。映画になったのは第1巻部分なのですが、この本、7巻まであります。 森も海も瘴気に充ち、巨大化した「虫」は人を襲い、人類はわずかに残された土地で細々と生きる世界。風の谷の「…

生は彼方に(ミラン・クンデラ)

ミラン・クンデラは不思議な作家です。共産主義革命を支持する詩人として出発しながら、詩作から決別し、やがて党の支持を失って、フランスへ亡命。民主化され、自書の発禁扱いも解けたチェコにも帰ることなく、現在もフランスで、しかもフランス語で作家活…