りぼんの読書ノート

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ラッシュライフ(伊坂幸太郎)

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「だまし絵」で有名なエッシャーの作品に、「城の階段を登っている兵隊が一周すると元の位置に戻っている」というものがあります。本書の表紙にもなっていますので、興味ある方はじっくり眺めてみてください。

この本は、エッシャーのだまし絵のように、「並行して進んでいるはずの4つの話が、実は別の話の起点だった」という仕掛けのトリックストーリー。というより、不思議ストーリー。

・失業中の男と犬。
・妻を殺そうとする不倫カップル。
・鉢合わせする泥棒たち。
・教祖を解体しようとする信者。

この4組が、舞台である仙台のところどころで出会いながら、話が進んでいきます。ここにからむのが、新幹線で仙台に向かう「金で何でもできると言い切る画商」の話。この話が唯一、時系列的に歪んでいないので、時の経過を確認できるわけです。

伊坂さん、ちょっと仕掛けに凝りすぎです。というより、仕掛け自体を描きたかったとしか思えない。ここには『重力ピエロ』のような軽妙さは、まだありませんね。まだ、第二作だから仕方ないのでしょうが、この作品から読んだら、ほかを読まないかもしれないな。「作家と読者が巡りあう時期」というのもあるのでしょう。

2005/6