りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

2014/10 凍てつく世界(ケン・フォレット)

巨匠ケン・フォレットが20世紀を描く「100年3部作」の第2部『凍てつく世界』は、臨場感にあふれた作品でした。近年パッとしない印象があったのですが、このシリーズで完全復活した感があります。やはり同じ時代を舞台にしたサーガ「クリフトン年代記…

ガウディの鍵(エステバン・マルティン)

926年に、バルセロナ市街で路面電車に轢かれて死亡したガウディ。それは普通の事故死だったのでしょうか。貧しい身なりをしていたため、身元が分からず、浮浪者と間違われたというのは、偶然だったのでしょうか。 「スペイン発ダビンチ・コード」は、晩年…

クリフトン年代記1.時のみぞ知る(ジェフリー・アーチャー)

『ケインとアベル』を髣髴とさせる壮大なサーガと評判の高い、「クリフトン年代記」の第1部。著者が得意とする、庶民階層に生まれた少年が成り上がっていく物語のようです。 1920年代。イギリスの港町ブリストルに住む貧しい少年ハリーは、歌唱の才能に…

肉体泥棒の罠(アン・ライス)

「ゴチック小説の女王」による「ヴァンパイア・クロニクルズ」の第4弾です。かつてトム・クルーズとブラッド・ピットの競演で話題となった「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の原作は、このシリーズの最初の作品でした。第2作の『ヴァンパイア・レス…

乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺(ラティフェ・テキン)

ここはトルコ版「マコンド」なのでしょうか。都市郊外のゴミ捨て場に「一夜建て」と呼ばれるバラックを建てた人々が不法に住み着いて出来上がった街。当局によって何度も追い払われながら、そのたびに戻ってきた人々の物語は、トルコ近代化の影を描いた社会…

ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ(ゲイル・キャリガー)

吸血鬼や人狼が人類と共存し、メカ使用人がお屋敷で働くヴィクトリア朝英国。「ホラー」と「スチームパンク」が同居する独特の世界観に基づいて綴られた「アレクシア女史シリーズ」に続く、「ソフロニア嬢シリーズ」の第2作。 レディのための「花嫁学校(Fi…

植物図鑑(有川浩)

「男の子に美少女が落ちてくるなら女の子にもイケメンが落ちてきて何が悪い!」との発想で書かれた冒険恋愛小説ですが、本書の「冒険」はちょっと変わっています。 飲み会帰りの晩、一人暮らしのマンションの前で、捨て犬のように行き倒れていた男を放ってお…

姑獲鳥の夏(京極夏彦)

京極夏彦さんのデビュー作です。「この世には不思議なことなど何もない」という、陰陽師の流れを組む古本屋の京極堂こと中禅寺秋彦が、怪奇事件の陰にある憑物を落として事件を解決していく、異色ミステリのシリーズ第1作。 代々某藩の御殿医であったという…

天冥の標3.アウレーリア一統(小川一水)

シリーズ第3作は、近未来の地球が謎のウィルス「冥王斑」に襲われてから約200年後。人類は小惑星帯を中心に太陽系内に拡散しています。 本書の主人公は、肉体改造によって真空に適応した「酸素いらず(アンチオックス)」の人々が作り上げたノイジーラン…

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと(チャールズ・ユウ)

「物理法則が93%しかインストールされなかった世界」で、しがないタイムマシン修理工をしながら時間の狭間を漂っている「僕」ことチャールズ・ユウ。UIのタミーと非実在犬のエドをかけがえのない存在として感じながら、電話ボックスと同じくらいの空間…

スプライトシュピーゲル4(冲方丁)

シリーズ読了。異能の少女戦士たちが活躍するYAなのですが、楽しめました。ノンストップアクションの激しさと、意表を突く展開。そして何より独特の世界観が貫かれているからなのでしょう。 国連組織経由で持ち込まれた世界中のテロが、民族主義の残渣と混…

スプライトシュピーゲル3(冲方丁)

民族主義の残渣と、国連組織経由で持ち込まれた世界中のテロが交差する近未来都市ウィーン。超少子高齢化を背景とした児童労働の許可と、重度身体障害者に機械化四肢を与える福祉政策の融合によって生まれた「炎の妖精たち」シュピーゲル。 シリーズ第3作は…

スプライトシュピーゲル2(冲方丁)

核爆弾に転用可能というロシアの原子炉衛星が落下。蠢きはじめた7つのテログループ。陰で操るプリンチップ社。姉妹編の『オイレンシュピーゲル2』と連動するノンストップアクションの始まりです。 日本の窮状を訴える組織から分離した過激派武装集団の「待…

スプライトシュピーゲル1(冲方丁)

永世中立国として誘致してきた国連機関が世界中のテロを招き寄せてしまうという皮肉な災厄に見舞われている、近未来のウィーン。さらに事態を混沌化させている、急速な移民の増加と、ネオナチ的な民族主義の復興。 ここでは、サイボーグとして特殊転送式強襲…

猫のパジャマ(レイ・ブラッドベリ)

2012年に亡くなった巨匠ブラッドベリさんが、2004年に出版された短編集です。1946年から2004年までに書いた作品が収録されていますので、新作だけではないのですが、「ピンピンしているし、書いている」という序文の言葉がいいですね。この…

トッカン-特別国税徴収官-(高殿円)

「若い女性のお仕事小説」というのは、ひとつのジャンルとなっているようですが、本書の主人公は、東京国税局京橋地区税務署に所属する新米税務職員の鈴宮深樹。言いたいことを言えず、すぐに「ぐ」と詰まってしまうため「ぐー子」という情けない通称をつけ…

ナニワ・モンスター(海堂尊)

新型インフルエンザを水際で食い止めようと検疫体制を強化する成田空港を尻目に、なぜか関西で発見された第1号患者。保守的だが知恵のある浪速市医師会のロートルメンバーたち。ナニワの風雲児と呼ばれる府知事が抜擢した、地方でくすぶっている検疫所技官…

本屋さんのダイアナ(柚木麻子)

映画「アナと雪の女王」やドラマ「花子とアン」など、「ダブルヒロイン・ストーリー」が人気を博していますが、本書の2人も強烈です。 金色に染められた髪、大穴という名前、ティアラと名乗るキャバ嬢の母親、行方不明の父親。孤独な小学三年生のダイアナの…

探偵サミュエル・ジョンソン博士(リリアン・デ・ラ・トーレ)

歴史上の人物を名探偵として活躍させる手法をはじめて用いたとされるのが本書です。18世紀イギリスの大文人で、英語辞典の編纂やシェイクスピア全集の編集の功績があるサミュエル・ジョンソン博士を探偵役に、後に『サミュエル・ジョンソン伝』を著した年…

死層(パトリシア・コーンウェル)

シリーズ第20作は、スカーペッタのとんでもなく多忙な1日で幕を開けます。カナダの化石発掘現場で失踪した女性科学者の、耳の断片を写したらしい謎の画像メールが送られてきたと思いきや、ボストンでは巨大なウミガメに引っかかった女性の変死体が発見さ…

政と源(三浦しをん)

73歳どうしの幼馴染、国政と源二郎は、これまでの人生も性格も異なり、ソリも合わないのに、腐れ縁なのでしょうか。ずっと付き合い続けて、周囲からはコンビとみなされています。 総白髪の国政はダンディーな元銀行員で、今は定年退職した身。奥さんに娘の…

凍てつく世界 4(ケン・フォレット)

いよいよ、第2部も最終巻を迎えました。 1943年。カーラがスパイとなったのは必然でした。フリーダの兄ヴェルナーが勇敢なスパイであり、決して腰抜けではなかったことを知って、彼への思いを新たにします。やがてヴェルナーが東部戦線に送られたとき、…

凍てつく世界 3(ケン・フォレット)

真珠湾攻撃による日本の参戦。しかし、まずは冬のモスクワで、次いで太平洋で、戦況は連合国の側に有利に傾いていきます。それとともに、登場人物たちの運命も変わっていかざるを得ません。 1941年。ヴォロージャがバルバロッサ作戦指令を入手していたに…

凍てつく世界 2(ケン・フォレット)

ついに第二次世界大戦が始まりました。登場人物たちの運命も交差していきます。 1937年。モスクワで赤軍情報本部に勤務するヴォロージャは、物理学者のゾーヤと知り合ったのもつかの間、内戦中のスペインへと送られます。そこでは、義勇軍に入ったロイド…

凍てつく世界 1(ケン・フォレット)

20世紀をテーマにした「100年3部作」の、『巨人たちの落日』に続く第2部は、全4巻の大著です。第1次世界大戦前後を扱った第1部から10数年、再びきな臭くなってきた世界では、前作の主人公たちの子どもたちの世代が主役となっていきます。 193…