核爆弾に転用可能というロシアの原子炉衛星が落下。蠢きはじめた7つのテログループ。陰で操るプリンチップ社。姉妹編の『オイレンシュピーゲル2』と連動するノンストップアクションの始まりです。
日本の窮状を訴える組織から分離した過激派武装集団の「待望の会」。第1巻にも登場したキプロス系トルコ人の「自由戦士団」。チェチェン人武装組織「ジョハルの手」。反ロシアを標榜するロシア人犯罪組織「ウラジャーイ」。7つのグループといいながら4つだけなのは、あとの3つは姉妹編に登場するから。そして両編に登場するのが伝説の狙撃手にして戦術指揮者のロートヴィルト(赤鹿)。もちろん背後にはプリンチップ。
核が持ち込まれたヴィエナ・タワーを崩落させるラストは、姉妹編と同じ場面です。そしてMSSとMPB両方の妖精たちが初めて出会う、スプライトによるオイレンの救出場面。著者が後書きで、「誰かが殉職するかもしれんと真面目に不安になった」と綴るほどのノンストップぶり。
本書の登場人物で印象に残ったのが、日本の行く末を真面目に案じる古風な老人で、武術の達人の「モリサン」。同じく刀を武器とする乙(ツバメ)に慕われ、「ミョーオーサマのワザモノ」になれと言い遺します。彼女の心臓で破滅への時を刻むワニも、モリサンのおかげで鎮まりそうです。
さらに、鳳(アゲハ)の過去の仲間でありながら、脱走してリヒャルト・トラクルを付け狙う螢(ホタル)と皇(スメラギ)という2人の少女の存在も明らかになっていきます。
2014/10