りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

しゃばけ19 いちねんかん(畠中恵)

このシリーズもこれで19作め。江戸で廻船問屋と薬種問屋を営む大店長崎屋のご主人夫婦が、はるばる九州の別府まで1年間の湯治にいくことになりました。これは病弱な若だんな・一太郎の跡取り修行ということなのでしょうか。店を託された一太郎は張り切る…

フォックスファイア(ジョイス・キャロル・オーツ)

1938年に生まれてノーベル文学賞の候補とまでなった著者が1990年に著した作品です。しかし本を構えて読む必要はありません。1950年代のアメリカの小都市で、虐げられた少女たちが秘密のグループを作って不条理な世間に立ち向かっていく物語なの…

鬼龍院花子の生涯(宮尾登美子)

夏目雅子の「なめたらいかんぜよ!」で有名な作品ですが、未見だったせいで完全に誤解をしていました。夏目雅子が演じたのが鬼龍院花子であり、当然のことに本書の主人公も花子なのだろうと思っていたのです。本書の実質的な主人公は花子の父である土佐の侠…

たゆたえども沈まず(原田マハ)

明治初期に渡仏し、パリを拠点として日本美術品を売りさばいたことでジャポニズムの機運を高めた画商・林忠正が、ゴッホと出会っていたのではないかという想定のもとに書かれた作品です。当時ようやく売れ始めたばかりの印象派の絵画をいち早く評価してマネ…

ハンガーゲーム0下(スーザン・コリンズ)

コリオレーナスが教育係を務めた第12地区の少女、ルーシー・グレイはハンガーゲームで最後まで生き残り、勝利者となりました。しかし、歌で人の心を惹きつけることしかできない少女が勝利した背景には、教育係を務めたコリオレーナスの不正があったのです…

ハンガーゲーム0上(スーザン・コリンズ)

映画としてもヒットした『ハンガー・ゲーム3部作』の前日譚は、本編の悪役であったコリオレーナス・スノーの若き日の物語でした。文明崩壊後の北アメリカで内戦に勝利したパネムが、なぜ支配下に置かれた12の地区から選ばれた男女24人の少年少女に殺し…

中島ハルコの恋愛相談室(林真理子)

無敵のヒロイン中島ハルコを演じる大地真央と、冴えないフードライターで語り手の菊池いづみを演じる松本まりかのダブル主演でTVドラマ化されたことをきっかけに読みました。2人ともハマリ役です。 ホテルで偶然ハルコに出会って、その迫力と毒舌に圧倒さ…

巣窟の祭典(フアン・パブロ・ビジャロボス)

メキシコ出身の若い作家のデビュー作「巣窟の祭典」と第2作「フツーの町で暮らしていたら」が収録されています。デビュー作では子供に、第2作ではティーンエイジャーの少年に語らせていますが、著者は後書きで「次作では老人が語り手となる」と述べていま…

御社のチャラ男(絲山秋子)

まずタイトルに騙されました。「チャラ男」というから今どきの薄っぺらい青年かと思ったら、中年の部長なのです。地方の食品会社に社長のコネで中途採用され、いきなり営業統括部長となった三芳道造44歳。チャラ男の定義は人によって異なるのですが、総合…

ある晴れた日に、墓じまい(堀川アサコ)

バツイチ44歳で古書店を経営する正美は、乳がんを患ったことで実家の墓じまいを決心します。母は亡く、小児科医で頑固な父は高齢で、親の期待を裏切って家出した兄も、ダウン症で施設に入所している姉も全くあてにならないのは明白。自分に何かあったら一…

祝祭と予感(恩田陸)

人生を賭けてピアノコンクールに挑んだ少年少女たちの姿を描いた『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ小説です。3人の主人公のその後の姿のみならず、審査員や音楽教師らの若き日のエピソードなども含まれており、本編を深く理解するのにも有益な作品でしょう。 「祝…

エルサレムの秋(アブラハム・B・イェホシュア)

ノーベル賞候補にもあげられる、イスラエルを代表する作家が若い時代に書いた作品です。本書に収められている中編2作とも著者30歳の頃に書かれているので、1960年代後半のもの。同時代の大江健三郎や安部公房らと共通する雰囲気を漂わせているように…

希望(ホープ)のいる町(ジョーン・バウアー)

翻訳者として著名な金原瑞人氏が選んだヤングアダルトのシリーズの中の一編です。違っていたらすみませんが、山本弘さんの『詩羽のいる街』のタイトルは、本書から連想されたものかもしれませんね。 本書のヒロインはホープという名を持つ16歳の高校生。腕…

日本文学全集6 源氏物語 下 各帖(池澤夏樹編/角田光代訳)

上巻・中巻と同様に、前の記事で本書に関する概説を書いたので、ここでは各帖ごとの概要をメモしておきます。 42帖「匂宮」薫る中将、匂う宮 43帖「紅梅」真木柱の女君のその後 44帖「竹河」女房の漏らす、玉鬘の苦難 まずは2人の主人公が紹介されま…

日本文学全集6 源氏物語 下 概説(池澤夏樹編/角田光代訳)

1週間かけて『源氏物語』を読み通しました。じっくりと読むやり方もあるのでしょうが、一気読みすることでかえって理解できたことも多かったように思います。まずは素晴らしい現代語訳を提供してくれた角田光代さんに感謝です。 下巻は、「宇治十帖」を中心…

日本文学全集5 源氏物語 中 各帖(池澤夏樹編/角田光代訳)

前の記事で本書に関する概説を書いたので、ここでは各帖ごとの概要をメモしておきます。 【玉鬘十帖】 22帖「玉鬘」いとしい人の遺した姫君 23帖「初音」幼い姫君から、母に送る新年の声 24帖「胡蝶」玉鬘の姫君に心惹かれる男たち 25帖「蛍」蛍の光…

日本文学全集5 源氏物語 中 概説(池澤夏樹編/角田光代訳)

『源氏物語』を3部に分けるなら、【第1部】の青壮年期がが1帖「桐壷」から33帖「藤裏葉」。【第2部】の晩年期が34帖「若菜上」から41帖「雲隠」まで。光源氏亡き後の【第3部】が42帖「匂宮」から54帖「夢浮橋」までとなります。この中巻には…

日本文学全集4 源氏物語 上 各帖(池澤夏樹編/角田光代訳)

前の記事で本書に関する概説を書いたので、ここでは各帖ごとの概要をメモしておきます。 1帖「桐壺」光をまとって生まれた皇子 まだ小説とは言い切れない王朝物語のトーンで光君の誕生が語られます。帝に深く愛された桐壷更衣は気品に満ちた光君を生んだも…

日本文学全集4 源氏物語 上 概説(池澤夏樹編/角田光代訳)

『源氏物語』を通して読むのは、高校生の時に岩波の「日本古典文学大系(通称)赤大系」全5巻を読んで以来です。その時はいわば古文勉強であって、脳内で口語訳するのに必死のあまり、全体の物語構成や表現の素晴らしさを味わう余裕などありませんでした。…

2021/6 Best 3

1.大統領の秘密の娘(バーバラ・チェイス=リボウ) アメリカ独立宣言の起草者としても有名な第3代アメリカ合衆国大統領トマス・ジェファソンには、黒人奴隷の愛人に産ませた混血の子供たちがいたといいます。大統領選挙中にスキャンダルとして攻撃された…

如何様(高山羽根子)

敗戦後、戦地から復員した画家は本人なのでしょうか。完璧な書類を備え、以前と同様の画力を有しているのに、その男は出征前とは似ても似つかぬ姿をしていたのです。これは戦地で病を得たせいなのでしょうか。しかも時を置かずして男は失踪してしまったので…

塵に訊け!(ジョン・ファンテ)

イタリア移民2世として1909年にコロラドで生まれた著者の、自伝的長編の第2作です。第1作の『バンディーニ家よ、春を待て』では、カトリック系イタリア人であることの差別や、家庭を顧みないDV父親の存在に苦しんでいた少年アルトゥーロは、20歳…

たまもかる(篠綾子)

「万葉集歌解き譚シリーズ」の第2弾です。前作『からころも』に登場した、日本橋の薬種問屋・伊勢屋に奉公する12歳の助松、賀茂真淵先生から和歌を学んでいる17歳の伊勢屋の娘・しず子、謎の陰陽師・葛木多陽人の3人が新たな謎に挑戦。助松の父親・大…

からころも(篠綾子)

『紫式部の娘。賢子』シリーズでブレークした著者による、「万葉集歌解き譚シリーズ」の第1弾。日本の古代に造詣の深い著者の作品ですが、本書の舞台は江戸時代。日本橋の薬種問屋・伊勢屋に奉公する12歳の助松が、賀茂真淵先生から和歌を学んでいる17…

ラー(高野史緒)

ピラミッドの謎に魅せられて、その建設現場を見るためにタイムマシンを開発し、紀元前2600年へのタイムトラベルに成功した現代人ジェディは、驚くべき光景を目にします。当時はまさにクフ王の時代でありピラミッド建造が始まったばかりのはずだったので…

愉楽(閻連科)エン・レンカ

国が指導した売血政策によってエイズが蔓延してしまった貧村の悲劇を描いた『丁庄の夢』と同様に、中国の国家当局への批判精神に溢れた作品です。本書は発禁処分にこそならなかったものの、「反国家」「反体制」「反革命」など、あらゆる「反」で始まる言葉…

高瀬庄左衛門御留書(砂原浩太朗)

50歳近くになって作家デビューした著者による第2長編ですが、既に藤沢周平や葉室麟の作品のような風格を有しています。本書の舞台となっている架空の神山藩も、海坂藩や羽根藩のような存在になっていくのかもしれません。 主人公は、10万石の神山藩で郡…

ポリー氏の人生(H・G・ウェルズ)

19世紀末から20世紀はじめにかけて『タイムマシン』や『宇宙戦争』などの空想科学小説を著して「SFの父」と呼ばれる著者が、自伝的要素を織り込んでコミカルなタッチで描いた作品です。しかし本書は、フェビアン協会に参加して人権擁護活動を行ってい…

まことの華姫(畠中恵)

続編の『あしたの華姫』を先に読んでしまったので、急いで本書を読みました。続編だけでも成立している連作短編なのですが、やはり逆順は良くないですね。主な登場人物たちの背景や人間関係の理由は、こちらを読んではじめて理解できることでした。 舞台は江…

大名倒産(浅田次郎)

ペリー来航によって国内は騒然とし始めたものの、まだ誰もが徳川治世の永続を疑わなかった頃の物語。大半の藩にとっては政治向きのことよりも、財政問題のほうがさしあたっての大問題。泰平の世に積もりに積もった大借金に嫌気がさした越後丹生山3万石の殿…