りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

2019/10 Best 3

10月にアップしたレビューの大半は、9月の旅行の際に読んだ本のもの。念願の長期欧州旅行に行ってきたのです。古本屋の安価文庫本を買い入れておき、片っ端から読み捨ててくるのですが、いつもより軽めの本ばかりになってしまいますね。ただし上位2冊は…

水滸伝5(北方謙三)

遼からさらに北方へと向かい、梁山泊と女真族との連携を試みた魯智深は、女真族によって捕縛されていました。かつて魯智深にオルグされて彼を慕っていた飲馬山の盗賊・鄧飛は、決死の覚悟で魯智深の救出に向います。 一方で、青蓮寺の李富によって二重スパイ…

水滸伝4(北方謙三)

江州にたどりついた宋江らの一行は、青蓮寺の幹部である黄文炳に居所を掴まれて大軍に攻囲されてしまいます。穆弘と李俊の手勢が宋軍と死闘を繰り広げますが、遠い梁山泊からの救援は間に合うのでしょうか。原典でも前半のハイライトである江州の戦いですが…

水滸伝3(北方謙三)

愛人としていた閻婆借殺害の罪に問われて放浪の旅に出た宋江は、江州へと向かいます。旅の途中で得た仲間が黒旋風の李逵。水滸伝でも一二を争う愛されキャラの人物でしょう。さらに掲陽鎮の顔役である穆弘、彼のライバルで江州の闇塩商人である李俊、飛脚屋…

水滸伝2(北方謙三)

第2巻では、いよいよ晁蓋の率いる革命軍が梁山泊を本拠地として構えます。盗賊に成り果てた一団が籠る天然の要塞をどうやって奪い取るかが、本書のメインストーリー。先に脱獄していた林冲が同志たちに先行して梁山泊入りしたのも作戦の一環。ここで宋江と…

水滸伝1(北方謙三)

今年の春に「北方水滸伝読本」の『替天行道』を読み、この壮大な再構成シリーズを読み返してみたくなりました。とりあえず旅先に第1巻から第5巻まで持参。記憶では、ここまでがひとつの区切りになっていましたので。 冒頭に魯智深が登場する場面が、まず印…

アンのゆりかご(村岡恵理)

戦前から戦後にかけての翻訳家・村岡花子の生涯を、孫娘である著者が綴った作品は、朝ドラ「花子とアン」の原作にもなりました。本書を読むと、彼女の原点が明治期のミッションスクールにあったことがよく理解できます。 日清戦争の前年に生まれた少女が、1…

ラヴクラフト全集1(H・P・ラヴクラフト)

「クトゥルフ神話」で有名なラヴクラフトの作品を、実は今まで読んだことがありませんでした。今では「20世紀アメリカが生んだ怪奇幻想小説の鬼才」として知られる著者ですが、生前はほとんど無名だったとのこと。彼が創造した異次元神世界は、死後に体系…

水族館ガール(木宮条太郎)

市役所に勤めて3年の由香が突然、市立水族館「アクアパーク」で働くように命じられ、とまどいながらも奮闘していくという、若い女性のお仕事小説です。『アクアリウムにようこそ』とのタイトルだった作品が改題され、ジュニア版として文庫化されたもの。 水…

未踏峰(笹本稜平)

ヒマラヤの未踏峰に挑む3人の若者たちは、登山経験もないことに加え、それぞれに問題を抱えて挫折した者たちでした。元システムエンジニアながら薬物依存となって罪を犯してしまった29歳の裕也。才能ある料理人ながらアスペルガー症候群で人と上手につき…

襲来(帚木蓬生)

生涯を日蓮のために捧げた下人の見助は、日蓮の命で派遣された対馬で、蒙古襲来をどのように体験したのでしょう。一貫して見助の視点から描かれた本書は、日蓮宗が生まれた背景であった当時の世相を伝えるとともに、人生においてかけがえのないものを人と人…

べにはこべ(バロネス・オルツィ)

1792年のフランス。王政を廃止した第一共和政が、貴族たちを日夜ギロチン台に送り続ける狂乱の中で、イギリス人の謎の秘密結社が暗躍していました。その結社「べにはこべ」の目的は、血に飢えたフランスから貴族たちを脱出させることであり、その首領は…

セレモニー(王力雄)

共産党建党記念祝賀行事と北京万博が重なる式典年の中国で、感染症パニックが発生。しかしこれは、功を焦る国家安全委員会メンバーが引き起こしたフライングでした。防疫活動を利用して競争相手を排除しようと目論んだ空騒ぎだったのです。WHOによってウ…

僕の光輝く世界(山本弘)

ある事件で視力を失った高校生の少年・光輝は、代わりに不思議な能力を手に入れました。それは損傷を負った脳が視覚神経以外からの情報で創り出した映像を、あたかも実際に見えているかのように思わせるものであり、医学的にはアントン症候群と呼ばれるもの…

案内係(フェリスベルト・エルナンデス)

南米文学が脚光を浴びて久しくなりますが、1902年にウルグアイに生まれた本書の著者のことは全く知りませんでした。「チリは詩人を、アルゼンチンは短編作家を、メキシコは長編作家を生み、ウルグアイは奇人を生んだ」というジョークがあるそうですが、…

白洲正子自伝(白洲正子)

幼少期より梅若流の能の舞台にあがるほど能に造詣が深く、青山二郎や小林秀雄の薫陶を受けて骨董を愛し、『かくれ里』など日本の美についての随筆を多く著し、吉田茂の側近として占領下の日本で活躍した白洲次郎を夫に持ち、梅原龍三郎、細川護熙、河合隼雄…

ある一生(ローベルト・ゼーターラー)

本書で綴られるのは、アルプスに抱かれた村で20世紀はじめに生まれ、貧しく平凡な生涯を送った男の物語にすぎません。しかし誰の人生も特別なものであるように、彼の人生には幾多の個人的な事件が散りばめられているのです。 その男アンドレアス・エッガー…

妙なる技の乙女たち(小川一水)

時は2050年の近未来。既に月と地球を結ぶ軌道エレベーターが、東南アジアの海上都市リンガに建設されていて、宇宙産業の拠点となっています。そこでは男たちに交じって、数多くの女性たちもひたむきに働いていました。 宇宙服のデザインに挑む駆け出しデ…

ジョン・マン6 順風編(山本一力)

航海術専門学校を主席で卒業した万次郎は、二等航海士として捕鯨船フランクリン号に乗り込みます。1846年のことなので、この時まだ19歳。大恩あるホイットフィールド船長は別の捕鯨船の指揮を採って航海中であるため、同じ船で働きたいとの希望は叶わ…

ジョン・マン5 立志編(山本一力)

鎖国下の日本から漂流後、アメリカで生活を始めた万次郎は、ホイットフィールド船長夫妻の教育を受けて、航海術船員学校であるバートレット・アカデミーに見事合格。最年少ながら既に水夫として捕鯨船に乗り込んだことがある万次郎は、学友たちからも一目置…

夢見る帝国図書館(中島京子)

上野にある「国際子ども図書館」の一部は明治期に建てられたレンガ棟であり、かつては「帝国図書館」といういかめしい名前だったとのこと。しかし近代国家の礎たるべく建てられた帝国図書館であっても、そこは淡島観月、幸田露伴、谷崎潤一郎、芥川龍之介、…

嵯峨野花譜(葉室麟)

文政13年の京都。事情あって父母と別れ、大覚寺・未生流で修行に励んでいる少年僧・胤舜は、年若くして活花の名手との評判を得ています。実は彼の実父は、政治的野望を実現するために妻子を捨てた水野忠邦であり、実母・萩尾は病を得て息子を手放し隠棲し…

ジョン・マン4 青雲編(山本一力)

ホイットフィールド船長に見込まれて養子となった万次郎は、16歳にして小学校に入学。捕鯨船の中で英会話は習得していたものの、読み書きはゼロだったので、これは当然のこと。なにしろ貧しい家庭に生まれた万次郎は、日本語の読み書きすら習得していない…

ジョン・マン3 望郷編(山本一力)

万次郎らを救出したアメリカの捕鯨船、ジョン・ハウランド号が、ついに母港のニューベッドフォードに到着。と思いきや、この巻はほとんどまるまる万次郎の回想に割かれます。といっても、そんなに長い期間の回想ではなく、ハワイを出港してからナンタケット…

ジョン・マン2 大洋編(山本一力)

著者と同郷の幕末の偉人、ジョン・万次郎の生涯を丁寧に描いている作品の第2作では、漂着先の鳥島殻アメリカの捕鯨船に救出された万次郎ら5人の漁師が、ハワイに到着するまでが描かれます。鎖国中の日本に立ち寄れないアメリカ船には、漁師たちを故郷の土…