りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

2011/5 未亡人の一年(ジョン・アーヴィング)

今月はシリーズものや再読が多かったせいで、あまり本を読んだ気がしません。新鮮味を感じられない作品ばかりが並んでしまいました。再読ですが、他との比較において『未亡人の一年』が第1位。『ガープの世界』の雰囲気を漂わせながら、最新作『また会う日…

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々(外伝)ハデスの剣(リック・リオーダン)

古代ギリシャのオリンポスの神々は、その時々の西洋文明の中心地にオリンポスを移し続け、現代の拠点はアメリカのマンハッタン。神々の習性ともいえる人間との恋愛も続いていて、神々と人間の間に生まれた「ハーフ」はいつの時代にも存在していたのです。 か…

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 5.最後の神(リック・リオーダン)

パーシーの16歳の誕生日は、「世界が破滅する日」になってしまうのでしょうか。クロノスに率いられたタイタン族は、ついにオリンポスに総攻撃をかけてきます。 セント・ヘレンズ火山の底から目覚めさせた最強の怪物テュポンは、各地を大災害に巻き込みなが…

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 4.迷宮の戦い(リック・リオーダン)

ついに、オリンポスの神々の仇敵であるタイタン族のクロノスが意外な姿で復活!かつてクレタにあった迷宮は、現代ではアメリカ全土の地下に広がっているとのこと。地下迷宮をタイタン族に利用させるために「アリアドネの糸」を入手しようとしている「ハーフ…

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 3.タイタンの呪い(リック・リオーダン)

強大な力を持つオリンポス12神のひとりアルテミスが行方不明に?しかも、直前にはアテナの娘・アナベスまで行方不明になっているのですから深刻です。アルテミスの親衛隊であるハンター隊を率いるゾーイや、前巻で復活したゼウスの娘のタレイアらとともに…

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 2.魔海の冒険(リック・リオーダン)

ポセイドンと人間の女性の間に生まれたという「ハーフ」の少年パーシーを主人公とするシリーズ第2巻は、「オデッセウス」と「アルゴノート」をモチーフとした海洋冒険物語。 二千年間姿を消している牧神パンの捜索に出た「半人半山羊」の友人・グローバーか…

パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 1.盗まれた雷撃(リック・リオーダン)

『ハリー・ポッター・シリーズ』の二番煎じみたいな作品ですけど、物語としてはこちらの方がおもしろいくらいで、予想外に楽しめました。 類似点も多いのです。主人公が特別な少年少女たちであり、特別の訓練所で学んでいること。強力な敵が甦りつつあり、主…

四畳半王国見聞録(森見登美彦)

森見さんが原点に回帰した作品です。『四畳半神話大系』からは「詭弁論部」「図書館警察」「映画サークルみそぎ」や小津や、孤高の乙女・明石さんと思しき女性が、『夜は短し歩けよ乙女』からは樋口師匠が、『走れメロス』からは芽野と芹名が登場しますが、…

未亡人の一年(ジョン・アーヴィング)

さまざまなエピソードがぎっしり詰まっていて、さまざまな読み方が可能な、いかにもアーヴィングらしい小説です。簡単にレビューを書けるものではないのですが、あえてシンプルに概括してみましょう。 この本は第1に、エディとマリアンの物語として読むこと…

虚空の旅人(上橋菜穂子)

「守り人シリーズ」の外伝的な作品です。第1巻『精霊の守り人』で彼女に助けられて成長した、新ヨゴ王国の皇太子チャグムが本巻の主人公であり、女剣士バルサは登場しません。 半島の先端に位置して島々を統べている隣国のサンガル王国での、新王の即位の儀…

リーシーの物語(スティーヴン・キング)

久々にキングの作品を読みました。主人公のリーシーは、有名作家だった夫を亡くした中年女性なのですが、モデルは奥様なんですね。「この本だけは唯一書評を読みたくない」と言ったのも頷けます。 夫スコットが亡くなって2年。悲しみの癒えぬままにようやく…

シンセミア(阿部和重)

山形県にある「神町」で、20世紀最後の夏におぞましい事件が相次いで起こります。高校教師の「自殺」、自動車整備工の「事故死」、農家の高齢者の「行方不明」を皮切りに、台風による水害と、洪水によって発見された「木箱の中の死体」、そして町の住民た…

女と男の名誉(リチャード・コンドン)

ジャック・ニコルソンとキャスリーン・ターナー主演で映画化された作品です。 ブルックリンの「ファミリー」幹部として荒々しい仕事を担っていたチャーリーが恋に堕ちた相手の女性アイリーンは、殺し屋だった・・。しかも、アイリーンは「ファミリー」を騙し…

安吾捕物帖2(坂口安吾)

洋行帰りの名探偵・結城新十郎と、安楽椅子探偵役の勝海舟が推理合戦を行なうシリーズの後半は、ますます「和製ホームズ」の趣を強めていくようです。本書の舞台となっている「明治20年前後」というと西暦では1890年ころ。ホームズが活躍したとされる…

安吾捕物帖1(坂口安吾)

明治20年頃、まだまだ雑然としている文明開化の時代を背景とするさまざまな事件に、隠居然とした勝海舟と、洋行帰りの名探偵新十郎と、剣術使いで推理マニアの虎之介が推理合戦を行なう短編集です。 前書きにもあるように、物語のパターンは概ね次のように…

オー!ファーザー(伊坂幸太郎)

著者の後書きによると、本書は第1期の最後の作品だそうです。ということは、第2期の始まりとなる『ゴールデンスランバー』の前に書かれたんですね。 高校生の由紀夫は、一家の1人息子なんですが、家族は6人。母親1人に加えて、父親が4人もいるんです。…

カズオ・イシグロ(平井杏子)

デビュー作から最新作までの全作品の解釈を通じて、グローバルな作家の全貌に迫る「カズオ・イシグロ」論です。著者はイシグロと同じ長崎生まれで、夫君の幼い頃の友人がイシグロの従兄だったということを「発見した」といいますから、因縁を感じますね。 研…

歓喜の島(ドン・ウィンズロウ)

1958年のニューヨーク。タイトルの「歓喜の島」とはマンハッタン島のこと。元CIAスパイで、現在は民間の会社で調査員をしているウォルターにまわってきた仕事は、若い上院議員と美しい妻の警護につくことでした。 この2人、明らかに大統領就任前夜の…

用心棒日月抄 凶刀(藤沢周平)

「3部作」と思われていたシリーズでしたが、8年後に第4作が出版されました。この間に『蝉しぐれ』や『三屋清左衛門残日録』を書いて、円熟味を増した藤沢さんがどうしても締めくくりを書いておきたかった作品なのでしょう。 前作『用心棒日月抄 凶刀』か…

用心棒日月抄 刺客(藤沢周平)

青江又八郎、みたび脱藩して江戸へ。藩主の毒殺を企んだ旧大富派を一掃し、藩政は安定を取り戻したかのように見えたのですが、大富家老はむしろ使い走りで、真の黒幕は、かつて藩主の地位を愚鈍な弟に奪われたことを恨みに思っていた、前藩主の弟で、現藩主…

用心棒日月抄 孤剣(藤沢周平)

藩主毒殺の陰謀を企んだ家老の大富丹後が、中老・間宮によって討ち取られたことによって帰参が叶い、許婚の由亀とも結婚できた青江又八郎が、再び江戸に向かうハメに陥ります。 大富丹後の変わり者の甥で剣鬼の静馬によって、一味の連判状が藩外に持ち出され…

用心棒日月抄(藤沢周平)

かつてNHKで「腕におぼえあり」としてドラマ化もされた、藤沢時代劇の傑作小説です。家老の大富丹後一派による藩主毒殺の陰謀を耳にしたことから、一味である許婚の父親を斬って脱藩し、江戸で浪人暮らしを始めた青江又八郎が主人公。 国元からの刺客との…