りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

2013/2 ブラックアウト(コニー・ウィリス)

瀬名秀明さんが「ルパン像の再構成」を試みた3部作『大空のドロテ』の第1巻を読んで、「ルパン・シリーズ」をきちんと読んでおこうと決意しました。読み始めてみたら、これが面白い。ルパン3世のキャラは、オリジナル・ルパンの影響をかなり受けているん…

スパイ・シンカー(レン・デイトン)

『ロンドン・マッチ』から『スパイ・ライン』までの5部作は、イギリス情報局の上級職員であったフィオーナのモスクワへの偽装亡命(1983年)から帰還(1987年)までを、夫でありながら妻の亡命の真相を知らされないまま、もがき苦しむ情報局員バー…

スパイ・ライン(レン・デイトン)

自らが所属するイギリス情報局に追われる身となったバーナードは、ベルリンで幼馴染だった友人ベルナーにかくまわれますが、あっさりと居場所をつきとめられてしまいます。しかも、あっさりと復帰が認められてしまうのですが、もちろんこれには裏がありそう…

スパイ・フック(レン・デイトン)

レン・デイトンのスパイ小説の人気が、日本ではル・カレより遥かに下なのは何故なのでしょう。どちらもリアリスティックでありながらドラマチックな展開であり、遜色ない面白さだと思うのですが。とはいえ、かくいう私も、イギリス情報局員のバーナード・サ…

ルパン傑作集3.奇岩城(モーリス・ルブラン)

ルパン・シリーズ初の長編である本書は、天才高校生イジドール・ボートルレが探偵役であるせいか、ジュブナイル版も多く出されています。昔読んだのは、それだったのでしょう。 ノルマンディーのジェーブル伯爵邸で発生した殺人事件と絵画盗難事件の謎を追っ…

FOR RENT-空室あり-(森谷明子)

『千年の黙(しじま)』、『白の祝宴』、『望月のあと』の「紫式部3部作」をはじめとして、日本の古代・中世に題材を求めた作品の多い著者による、現代ミステリです。 物語の発端は、母親が死の間際に遺した「あたしが殺したの」との言葉の意味を探ろうとい…

泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部(酒見賢一)

長坂坡で曹操に大敗して辛くも逃げのびた劉備一党は、起死回生の策として「呉」との共闘を模索。いよいよ『三国志』の白眉である「赤壁の戦い」の始まりです。 が、その前に、酒見さん描くところの「呉」が凄すぎます。都から離れた辺境の無頼の地「江南」は…

金の仔牛(佐藤亜紀)

近世ヨーロッパの「三大バブル」といえば、オランダの「チューリップ熱」と、イギリスの「南海泡沫事件」と、フランスの「ミシシッピ計画」のこと。本書は18世紀初頭のルイ15世治下のパリを舞台にして、マネーゲームに狂乱して翻弄される詐欺師たちの物…

タイガーズ・ワイフ(テア・オブレヒト)

25歳のセルビア系女性作家による、2011年度の「オレンジ賞」受賞作です。この作品は、全米図書賞の最終候補にも残ったとのこと。 戦争で分たれた国境の向こう側にある村の孤児院に向かった小児科医のナタリアは、道中、祖母からの連絡で祖父の死を知ら…

ルパン傑作集2.813続(モーリス・ルブラン)

『813』の続編では、大富豪ケッセルバック氏の遺した重大秘密をめぐって、ルパンと謎の人物「LM」の間で死闘が繰り広げられます。前巻の最後で偽装も暴かれ、警察に囚われてしまったルパンでしたが、大胆にも獄中から重大秘密の断片を新聞にリークし、…

ルパン傑作集1.813(モーリス・ルブラン)

瀬名秀明さんの『大空のドロテ』がルパン像を再構成する試みのようですので、第2巻を読む前に復習しておこうと思い、新潮文庫版のシリーズを読んでみることにしました。「ホームズ」と同様に、「ルパン」もジュブナイル版の一部しか読んでいなかったのです…

華竜の宮(上田早夕里)

『ブラック・アゲート』を読んで、上田さんの前作を読んでみたくなりました。本書は地球規模の変貌と危機を描いた、本格的なSF作品となっています。 時代は25世紀。ホットプルームによる海底隆起で250メートルもの海面上昇が起こり、多くの陸地が水没…

ロカノンの世界(ル=グィン)

『ゲド戦記シリーズ』のル=グィンさんの処女長編です。冒頭のエピソードには、出版社から全く相手にされなかった最初の短編が使われているとのこと。 本書は、著者の初期作品群をなす「ハイニシュ・ユニヴァース・シリーズ」の第1作でもあります。宇宙規模…

空飛ぶ広報室(有川浩)

航空自衛隊のホームページでも紹介されているという異色小説ですが、デビュー作『 塩の街 』に始まり『空の中』、『海の底』と続く、陸海空の「自衛隊三部作」の著者による、「防衛省航空自衛隊広報室」を舞台としたお仕事ラブコメですから、得意分野ですね…

ブラック・アゲート(上田早夕里)

人間の体内に卵を生み付ける新種の寄生バチを扱ったバイオSF作品です。アゲート蜂と名付けられたこの寄生バチは宿主となった人間を衰弱死させるのみならず、化学物質を分泌して宿主の脳を機能不全に陥れるというのです。確実な治療法もなく、人間社会は恐…

ブラックアウト(コニー・ウィリス)

『ドゥームズデイ・ブック』と『犬は勘定に入れません』に続く、未来のオックスフォード大学史学生による時間旅行シリーズ第3弾です。 主人公は、第2次大戦下のイギリスの現地調査に送り出された3人の史学生。マイクルはアメリカ人記者としてダンケルク撤…

大空のドロテ 1(瀬名秀明)

「怪盗ルパン」の生みの親ルブランによる『綱渡りのドロテ』は、非ルパンシリーズとされているとのことですが、瀬名さんは「ドロテとルパンの関係」を軸にした再構成を試みています。第1巻でのルパンの登場場面はありませんが、影の主人公はルパンです。 1…

みをつくし料理帖7 夏天の虹(高田郁)

シリーズ第7作になります。 前作で、いつも適切なアドバイスをしてくれる常連客の小松原様こと御前奉行の小野寺数馬からのプロポーズを受け、武家に嫁ぐ決心をした澪でしたが、料理の道を全うしたいという思いとの間に心は揺れ動きます。「迷った時には、自…

アレクシア女史、埃及で木乃伊と踊る(ゲイル・キャリガー)

シリーズ最終巻となる第5作です。人類と異界族が共存する19世紀英国で唯一の「反異界族」であるアレクシアは、人狼のマコン伯爵と結婚して女王の諮問機関である「陰の議会」の議長となっていましたが、特殊能力を有する娘プルーデンスが生まれてからはい…

雪と珊瑚と(梨木香歩)

珊瑚21歳。生まれたばかりの娘・雪をかかえたシングルマザーは、お金も食べるものもなく追い詰められていました。しかし、裏通りの住宅街で「赤ちゃん、お預かりします」の張り紙を見つけたことから彼女の物語が動き始めます。 張り紙の主・薮内くららは、…

ロスジェネの逆襲(池井戸潤)

『オレたちバブル入行組』と『オレたち花のバブル組』に続くシリーズ第3作とは知らずに、前2作を未読のまま本書を読んでしまいましたが、本書のテーマを理解するうえでは差し支えないようです。 時代は2004年。バブル崩壊後に入社してきた、いわゆるロ…