りぼんの読書ノート

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金の仔牛(佐藤亜紀)

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近世ヨーロッパの「三大バブル」といえば、オランダの「チューリップ熱」と、イギリスの「南海泡沫事件」と、フランスの「ミシシッピ計画」のこと。本書は18世紀初頭のルイ15世治下のパリを舞台にして、マネーゲームに狂乱して翻弄される詐欺師たちの物語。

街道で馬車を襲った追い剥ぎの青年アルノーは、乗客の老紳士から儲け話を持ちかけられます。その後、美しい娘ニコルと恋に落ちたアルノーは、金欲しさからその紳士カトルメールの手先になり、持ち前の勘と気風の良さから青年実業家として快進撃を始めるのですが、その仕事とは王立銀行が所有するミシシッピ株への出資金を集めることだったのです。

フランスのアメリカ開発を担うミシシッピ社は国費で生き延びている破産寸前の会社にすぎず、イギリスの東インド会社をイメージしてはいけないようです。ミシシッピ社の株を買うことの経済的意味は、フランス王室の保証を期待するに等しく、要するにフランス王室の借金を債権化したようなもの。しかし株価は加熱し、暴走し、会社の時価総額がフランスの発行紙幣総額を越えるという超バブル状態に・・。

老獪な投資家カトルメール、ニコルの父親で娘を奪ったアルノーを恨んでいる故買屋のルノーダン、ニコルに目をつけたサディスト変態貴族のオーヴィリエ公爵、アルノーの追い剥時代の元締めヴィクトール、冷静な戦略家の金細工師3兄弟などが絡んで、狐と狸の化かしあいを始めるのですが、皆に共通しているのはただひとつ、イザという時にはアルノーを犠牲にしようと目論んでいたこと。果たして若いカップルの行方は・・。

「需要と供給で価格が決まる」という法則を発見して応用した財務総監ジョン・ローによるバブルはフランス経済を破綻させ、後のフランス革命の遠因を作ったとされます。確かに、破産貴族やにわか成金を大量に作り出してしまったら、アンシャン・レジュームも揺らぎますよね。ただ、フランスの財政はルイ14世時代に既に破綻に瀕していたことも言っておかないといけませんね。一定のインフレは求められていたのです。しかし、それって「アベノミクス」と一緒だなぁ。今後の日本経済が不安です。^^;

それにしても「バブル時代」とは「詐欺師の時代」であることを、つくづく感じさせられました。

2013/2