りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

傷だらけの天使(矢作俊彦)

30年前の大ヒットドラマ「傷だらけの天使」については、井上堯之バンドの軽快な音楽に乗ってヘッドフォンにゴーグル姿の萩原健一さんが、むさぼるように朝食を食べるオープニングの場面と、彼を「アニキィ~」と呼んでいたチンピラ風の水谷豊さんが亡くな…

ハリーポッターと死の秘宝(J・K・ローリング)

ついに全7巻を、遅ればせながら読了です。この超人気作品を年内に読めるとは思ってませんでした。はじめは「ちょっと不思議な学園もの」かとも思わせたシリーズでしたが、巻が進んで主人公たちが成長するに連れて著者の世界観も形をとりはじめ、ストーリー…

「読書ノート1000冊」達成!

2004年7月からつけはじめた読書ノートが、4年4ヶ月かけて1000冊に到達しました。1000冊読んだことより、1000冊分の記録をつけたことに、我ながら驚いています。こんなに続けられるとは思っていませんでしたし、よく書き続けられたもので…

荒野(桜庭一樹)

直木賞を受賞した『私の男』の暗いテーマには引いてしまいましたが、受賞第一作のこの本は、思春期の少女の心の揺れを描いてくれた、いい作品でした。 主人公の少女、山野内荒野の12歳から16歳の環境は、恋愛小説家で浮気性の元美男子の父親と、再婚相手…

密偵ファルコ 3.錆色の女神(リンゼイ・デイビス)

紀元71年、ネロ後の混乱を制したウェスパシアヌス皇帝の治世も3年目に入ったローマ。これまで皇帝直属の密偵として、ブリタニアの銀鉱山での不正を暴き、ローマ南部での叛乱の兆しを未然に防ぐことに成功したファルコですが、今回は、ローマ市民となった…

まだ人間じゃない(フィリップ・K・ディック)

ディックの短編集ですが、先に読んだ『ゴールデン・マン』と合わせて一冊だったそうです。どの作品も、豊かで常人の意表を衝く発想で満ち満ちていて、ディックが「最も映画化されたSF作家」だということが実感できること間違いなし! 「フヌールとの戦い」…

潜入捜査(今野敏)

ブロガーさんたちの間で話題になっている『隠蔽捜査』を読もうとして、まちがってこの本を借りてしまいました。これは10数年前に書かれたもので、元題が『聖王獣拳伝』(なんてタイトル!)。作者自身、「小説を書くことがわかっていなかった時代の作品」…

新世界より(貴志祐介)

1000年後の日本を描いたSF小説ですが、これはおもしろかったですね。何の予備知識も持たずに読んでいただくのが一番ですが、それではレビューになりませんので少々コメントしておきます。 利根川沿いの神栖66町で「普通に」小学校生活をおくっている…

ふくろう女の美容室(テス・ギャラガー)

詩人、小説家、そしてレイモンド・カーヴァーの妻としても知られる著者の短篇集です。タイトル作もそうですが、短編10作品の中で美容室が登場する作品が3つ。夫を亡くした中年から初老の女性が、詩情をもって日常の断片を切り取った一人語りが上手な作家…

美女と竹林(森見登見彦)

あの森見さんが、美女はともかく、なぜに竹林? と思ったら、竹林とは深い関係があったのですね。 幼少時代には、父親に連れられて祖父の家の裏の竹林にタケノコ掘り。学生時代には文化人類学の演習で竹による茶筅つくり。大学院では竹の培養を専攻しただけ…

誘拐(五十嵐貴久)

銀行から乗り込んできた上司にリストラ担当として指名された秋月ですが、退職させた先輩が一家心中してしまい、先輩の娘と仲の良かった自分の娘までもが自殺。傷心の秋月は復讐のために、大胆な犯罪に打って出ます。 なんと現職総理大臣の孫娘を誘拐して、折…

天安門(シャン・サ)

フランスのゴンクール賞新人賞を受賞した、シャン・サさんの処女作です。天安門事件で弾圧された民主化運動の女性リーダーだった雅梅(アヤメイ)の心の動きがポエティックに、それでいて力強く描かれています。 雅梅に詩を教えてくれたのに、親や教師に反対…

いっちばん(畠中恵)

「しゃばけシリーズ」第7弾。今日も病弱な若旦那の一太郎の願いは、人の役に立てる人間になること。一太郎と、彼を囲む妖(あやし)たちとが繰り広げる、「大江戸怪奇ミステリ」のはずだったこのシリーズも、かなり人情話が中心になってきました。 「いっち…

ベイジン(真山仁)

北京オリンピックは、少数民族問題や食の安全の問題、環境問題などを覆い隠すようにして無事に終了しましたが、オリンピック直前に刊行された本書では、ありえたかもしれない「最悪のシナリオ」が展開されてしまいます。 本書で描かれたのは、中国では「核電…

西のはての年代記Ⅲ パワー(ル=グィン)

『ギフト』、『ヴォイス』と続いた「西のはての年代記」が、本書で完結。ただ、相当に余韻を残したエンディングですので、続編を期待したいところです。 第3巻の舞台は、中央の都市国家群。主人公の少年ガヴィアは、都市国家エトラの有力氏族のもとで、姉と…

史記武帝紀1(北方謙三)

神話の時代と言ってもいい三皇五帝時代から前漢の武帝時代までの中国正史の第一の書であり、その後の歴史書の原型ともなった「史記」は、司馬遷によって編纂されました。殷周の戦い、春秋戦国時代を経て、秦の始皇帝による中華統一、項羽と劉邦の覇権争いを…

ライト(M・ジョン・ハリスン)

スケールの大きさと、ガジェットの新鮮さで読ませてくれる本でした。久々にかなり本格的なSFを読んだ気分です。 3つの物語が交替で進行するのですが、最後になって意外な関係が明らかになってきます。1999年のロンドン、物理学者カーニーの、量子コン…

見知らぬ場所(ジュンパ・ラヒリ)

既刊の『停電の夜に』や『その名にちなんで』では、異郷に暮らすベンガル人家族の抱く微妙な違和感や哀しみが巧みに描かれていましたが、ラヒリさんは進化していますね。ベンガル風のテイストは隠し味のように使われ、親子の絆や、夫婦の愛情の振幅といった…

修道士カドフェル1 聖女の遺骨求む(エリス・ピーターズ)

シュルーズベリの町を「通過」したことがあります。北ウェールズに向かう途中の雨の夕方。どこに泊まろうか迷いながらドライブしているうちに通過しちゃって、何の印象も残っていないのですが、カドフェルの舞台となった町ということは知っていました。だか…

グッバイ・サイゴン(ニナ・ヴィーダ)

ロサンゼルスの郊外、ベトナムからの移民が集まり住むリトルサイゴンで出会った2人の女性。戦火のベトナムを逃れてアメリカに渡ったアインと、ユダヤ系アメリカ人のジェイナ。 2人に共通するのは悲惨な過去。ベトナム戦争の最中、サイゴンの家族は10代の…

ブラック・ウォーター(T・ジェファーソン・パーカー)

カリフォルニアを舞台とする上質のミステリを提供し続けている著者が、オレンジ郡の女性捜査官、マーシ・レイボーンを主人公としたシリーズものの3作目。 マーシーの同僚の保安官補アーチーが、自宅で意識不明の重傷を負って発見されます。妻のグウェンは、…

テンペスト(池上永一)

池上さんの小説の舞台には、やっぱり沖縄が一番似合いますね。19世紀、滅び行く琉球王朝を舞台にした、千年の眠りから醒めた龍たちが交合する中で生まれたという伝説の女性「真鶴(まづる)」の物語。 女性は公職につけないという伝統に反して、美少女・真…

警官の血(佐々木譲)

宮部さんの『楽園』以来、久しぶりに、読み応えのある日本の長編小説を読んだ気がします。親子三代に渡って警察官となった孫が、祖父の事故死と父の殉職事件をめぐる謎を、ついに解き明かすまでの物語。 とはいえ物語の重点は、謎の解明をする「現代」ではな…

2008/9 囚人のジレンマ(リチャード・パワーズ)

今月の1位とした『囚人のジレンマ』は、わかりにくい構造を持った小説でした。でもその分、全てが明らかになったときの感動は大きくなったように思えます。 「世界の神話シリーズ」の一冊である『永遠を背負う男』は次点としましたが、30年の構想で全10…