りぼんの読書ノート

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ブルボンの封印(藤本ひとみ)

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デュマのダルタニャン物語・第3部の中心テーマでもあった「鉄仮面」の謎と陰謀の物語を、少女マリエールの成長譚として軽やかに綴りあげた、藤本さんのメジャー・デビュー作です。宝塚で舞台化もされました。

死の床についたルイ13世が枢機卿マザランに託した、フランス王室の根源にも関わる大秘密とはいったい何だったのでしょう。10数年後、イギリスのジャージー島に「封印」された美貌の青年ジェームズは、自分の出生の謎を調べるために島から脱出。彼を慕う薬屋の娘マリエールもまた、捨て子であった自分の身元を求めてフランスに渡ります。

折りしもフランスでは、青年王ルイ14世の若い側近たちが、国王親政を求めてマザランやフーケと対決色を深めていました。薬草の知識で生命を救ったルイ14世から求愛されたマリエールは、国王とジェームズが瓜二つであることに気づきます。果たして、ジェームズとマリエールの出生の秘密とは何であり、2人の運命にどう関わってくるのでしょうか。

一方、マリエールへの嫉妬からマザランのスパイとなっていた義妹マノンは、毒薬使いとなって復讐の機会を狙い続けます。やがて、それぞれの思いを込めた陰謀劇が頂点に達するときに悲劇が起こります。

ロマンス色が濃すぎますし、ご都合主義も目立つのですが、大きな歴史テーマを独自の解釈で描ききった力作です。映画「仮面の男」の結末よりも優れていると思います。マリエールの「その後」が気になっていますので、できれば「続編」も書いて欲しいものです。かなり以前の作品ですので、今更なのですが・・。

2014/2