りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006-12-01から1ヶ月間の記事一覧

白鳥異伝(荻原規子)

荻原さんもまた、「ページターナー」ですね。『勾玉シリーズ3部作』の2作目です。これ、順番に読めば良かった・・。 女神を失った悲しみから、豊葦原の国を混沌に返そうとする男神。男神の意を受けて豊葦原を統べる「輝(かぐ)」の子孫たちを癒すのが、女…

クリムゾン・リバー(ジャン=クリストフ・グランジェ)

「ページターナー」という人種は、確かに存在するのですね。著者もまた、「この後どうなるの?」という読者の興味を掻き立てて次々と先のページをめくらせてしまう書き手の一人です。 花形警視が捜索を進める、アルプス山間の大学街での連続殺人事件。両目を…

ぼっ♪ぼっ♪ぼくらはエジプト探検団(吉村作治)

「世界不思議発見」でおなじみのエジプト考古学者の吉村作治先生が、40年前の学生時代にエジプト遺跡調査に乗り出した時の出来事を小説仕立てで書き著しました。 1960年代。1ドルは360円で、外貨持ち出しは500ドルまで。エジプトなんて遠い遠い…

シリアル・キラーズ・クラブ(ジェフ・ポヴェイ)

なぜか「連続殺人者クラブ」に加入してしまったダグラスは、自分が連続殺人者でないことを疑うメンバーを殺してしまい、いつの間にか「連続殺人者キラー」になってしまいます。 そんな彼に接触してきたのが、FBI捜査官。どうやら、人知れず社会をただす正…

複合汚染国家中国(黄文雄)

これは、一種の「とんでも本」のようです。中国と中国人が現代世界にもたらすリスクについて、これでもかというほど強調し、警戒を呼びかける内容なのです。 確かに、今の中国にはリスクがいっぱい。軍拡と結びついた領土問題に、経済格差と役人の汚職。世界…

女信長(佐藤賢一)

フランス史に題材を取った作品が多い佐藤さん。前作の『カポネ』も意外でしたが、今度は『信長』とは! しかも「信長は女だった」という、驚天動地の新解釈! でも、結構、面白く読めたりして・・。女だからこそ、力任せの白兵戦を好まず、鉄砲を採用した。…

暁への疾走(ロブ・ライアン)

ナチス占領中のフランスで、イギリス情報部の密命を受けてレジスタンスを支援した、天才レーサーたちの物語。実在の人物による実話を基にして書かれた小説だそうです。 お抱え運転手からトップレーサーに駆け上がったウィリアムズと、元戦闘機乗りでエリート…

空想科学読本5(柳田理科男)

『空想科学読本』が出たのは、何年前だったでしょうか。当時、面白く読ませてもらいました。「生涯で1冊でも本を出せれば」と思っていた塾の講師である著者としては、想定を大幅に上回る大ヒットのシリーズです。 後に誤りを含んでいたことも明らかにされた…

美しい人 9lives(ロドリゴ・ガルシア)

9人の女優がオムニバス形式で演じる、9つの愛の物語。映画のノベライズ本ですが、これは映画を観るべきでした。せっかく凄い女優たちが競演しているのですから・・。 1話10分ほどの、それぞれほとんどワンショットの映画だそうです。切り取ったひとつの…

沈黙の森(C.J.ボックス)

『リンドキストの箱舟(アン・ハラム)』と同じ、野口百合子さんの翻訳。やっぱり、「自然保護」に関係した物語を訳してるんですね。 主人公は、ワイオミング州猟区管理官のジョー・ピケット。職務にも家族にも誠実で心優しい男ながら、州知事を偶然検挙した…

温室デイズ(瀬尾まいこ)

荒れるクラスを何とかしようと声をあげたためにイジメに遭うことになったみちると、それをどうにもできずに教室に入れなくなってしまう友人の優子。この2人が交互に語る、孤独な中学生たちの物語。 イジメの話は、辛いですね。実社会から見た中学校は、確か…

隣りの若草さん(藤本ひとみ)

オルコットの名作『若草物語』をモチーフにした、コメディ・タッチのヒューマンドラマ。「メグ、ジョー、べス、エイミー」の代わりに登場するのは、「梅子、桃子、桜子、百合子」の、現代日本の4姉妹。 社長秘書としてバリバリに働いている美女は長女・梅子…

ニッケル&ダイムド(バーバラ・エーレンライク)

世界一豊かな国・アメリカは、実は世界一の格差大国です。本書は、フェミニスト批評家として知られる著者が、実際に低賃金で働き「ワーキング・プア」階層の生活を実体験して著した、潜入ルポ。 60歳近い年齢で、ウェイトレス、掃除婦、店員として何ヶ月も…

ミーナの行進(小川洋子)

中学生になった女の子が、ミーナの家で暮らす1年間の物語。家庭の事情で母と離れ、伯母の家で暮らすことになった朋子。伯母の結婚相手はドイツ人の母を持つ飲料会社の社長であり、朋子はそこでさまざまな新しい体験をするのです。中でも、ドイツ風に「ミー…

ウィーン物語(宝木範義)

ウィーンというと、何を思い浮かべるでしょうか。ドナウ川、神聖ローマ帝国、ハプスブルク家、「会議は踊る」、シュテファン聖堂、モーツアルト、ウィンナー・ワルツ、クリムト、分離派、フロイト、ウィンナー・コーヒー、ザッハー・トルテ・・。色んな言葉…

誠実な詐欺師(トーベ・ヤンソン)

厳寒のフィンランドを舞台に、2人の女性の人生が交差します。聡明ながら両親を早くに亡くして貧しい25歳のカトリ。莫大な遺産と才能ある画家としての収入を持つ老女アンナ。 秘書としてアンナの屋敷に同居しはじめたカトリは、アンナの財産管理がずさんで…

リンドキストの箱舟(アン・ハラム)

異常気象によって野生動物は絶滅し、凍土と化した近未来の地球。雪に閉ざされた荒野を、たった1人で駆け抜ける少女・スロー。いいえ、彼女は1人ではありません。彼女の連れは、野生動物を蘇らせる鍵となる不思議な生きもの。自然界から失われた動物たちのD…

ティファニーで朝食を(カポーティ)

ヘップバーン主演の、あまりにも有名な映画の原作です。アパートの階段に腰掛けて「Moon River」を歌う姿や、雨の中ネコを逃がして街を出る場面は、有名ですね。 大都会の片隅で奔放な生活をおくる「ホリー(旅行中)」。小洒落ていて、華やかなことが好きで…

風の影(カルロス・ルイス・サフォン)

1945年のバルセロナというだけで、とってもミステリアス。スペイン内戦で最後まで抵抗し、陥落後、徹底的な弾圧を受けた街。 霧深い朝、10歳のダニエルは、父に連れて行ってもらった「忘れられた本の墓場」で、運命の本『風の影』に出会います。内戦中…

お菓子放浪記(西村滋)

シャンソン風の、「お菓子の好きなパリ娘」という歌があります。1920年に日本で作られた歌ですが、なぜか母がよく歌っていました。この本を貫いて流れているのは、このメロディ。 でもタイトルから想像されるような、お洒落な本ではありません。日本が戦…

アレクサンドル一世(アンリ・トロワイヤ)

『女帝エカテリーナ』、『イヴァン雷帝』、『大帝ピョートル』といったロシア・ロマノフ王朝の歴代皇帝史をシリーズで書いた著者の作品です。 上に揚げた皇帝たちよりはるかに印象の薄いアレクサンドル1世ですが、彼の時代にはナポレオン侵攻による「大祖国…

司書はときどき魔女になる(大島真理)

直前の本が、めちゃくちゃ読みにくかったので、口直しに軽い本。東北福祉大学の図書館司書と講師を勤め、「司書は天職」と語る大島真理さんが、図書館司書の仕事と魅力を綴ったエッセイ集です。 図書館のヘビーユーザーなので、司書の仕事には興味があります…

ジョン・ランプリエールの辞書(ローレンス・ノーフォーク)

ジョン・ランプリエールという人物も、彼が編纂した辞書も、実在するそうです。ほとんど歴史に埋もれてしまった地味な学者を主人公にした理由は、彼の『古典籍固有名詞辞典』が、ギリシャ・ローマ神話に登場するきらびやかな人名やエピソードで、いっぱいだ…

浮世の画家(カズオ・イシグロ)

戦時中には、時局に便乗して戦意高揚絵画を描いていた画家が、戦後、人々の意識とモラルが激変した、急激な価値転換の中で、精神的な拠り所を求めて苦悩する。 イギリスで育った日本人作家が、英語で、日本の戦後の一断面を描いたとのことで話題になり、なん…

空色勾玉(荻原規子)

この作家の本は『薄紅天女』についで、2冊目です。どちらも「こんなタイトルでこんな表紙」の割りには、内容は深い。中高生にも人気というライトノヴェル・ファンタジーですが、著者の神話と古代史への造詣の深さが素晴らしいのです。 かつて男神と女神は豊…

ナラタージュ(島本理生)

若い読者に人気の、現役女子大生作家の書いた恋愛小説。 「張り詰めて、そらすこともできない20歳の恋」とあるけど、こんな恋愛が「純愛」として、若い読者には人気があるのでしょうか。読後感は、とっても悪かった。もう、この作家の本は、読まないな。 …

あやし うらめし あな かなし(浅田次郎)

多筆のせいか、最近の作品はちょっと冴えない浅田さんですが、こういう作品を書かせたら、うまいなぁ。 夏の夜にふさわしい、怪談短編集です。でも、決して怖がらせるための怪談話ではありません。そこに描かれるのは、生者と死者のさりげない邂逅であり、此…

Lady, Go(桂望実)

かわいくないし、ネクラだし、上手に嘘もつけない。「ちょっぴり自分嫌い」で、いつも「すみません」と謝ってる。彼氏に振られ、派遣先もクビになった玲奈が、キャバクラ嬢に! キャバクラ嬢のお仕事って、大変なんですね。とにかくお客様に、また足を運んで…

東スポ黄金伝説。(赤神信)

駅の売店に並んでいる、ド派手な見出しが並ぶ『東京スポーツ』。夕刊スポーツ新聞だけど、一面を飾るのはサッカーや野球じゃない。芸能ゴシップに、プロレス、格闘技、競輪、競馬・・。裏面は、眺めるのも恥ずかしい、風俗記事や、夜の求人広告。 でも、こん…

女帝 わが名は則天武后(シャン・サ)

中国四千年の歴史上、皇帝の座に就いた唯一の女性である則天武后。後世の歴史家からは冷酷な悪女として貶められ、皇帝であったことすら否定されてきた女性という正史ん、中国出身の女性作家が挑みます。 平民生まれで、父を亡くし、何の後ろ盾もない少女が、…