りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

2014/3 リヴァイアサン三部作(スコット・ウエスターフェルド)

今月の上位作品は全てSFです。しかも1位の三部作と3位の作品は、「銀背」と呼ばれる「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」です。2年も前から刊行されていたのですね。これまでコニー・ウィルスさんの作品しか知りませんでした。このたび第2期12作品の刊行…

黒い季節(冲方丁)

著者18歳のときのデビュー作です。 裏の世界であるヤクザ社会と、もうひとつ裏の世界である陰陽の一族の3組の出会いが、物語を加速させていきます。未来を望まぬヤクザ「藤堂」には、記憶を喪い未来の鍵となる美少年「穂」。全てを壊して未来を手にしよう…

サイボーグ009完結編3(石の森章太郎、小野寺丈)

はっきり言って、残念な作品でした。オリジナルの「009シリーズ」に愛着を感じる人ほど、がっかりするように思えます。 神々が人類を殺戮しはじめます。その真意はどこにあるのでしょう。圧倒的な神々の力の前には、強化されたサイボーグたちも無力であり…

サイボーグ009完結編2(石の森章太郎、小野寺丈)

石ノ森章太郎さんの遺稿を、息子の小野寺さんがノヴェライズした3部作の第2巻では、第1巻に引き続いてそれぞれのサイボーグ・メンバーに焦点が当てられます。005から009までが、サイボーグとなるまでの物語と、ブラック・ゴーストとの戦いを終えた…

舞姫・うたかたの記(森鴎外)

鴎外初期の「独逸三部作」を収録した短編集です。 六草いちかさんが舞姫エリスの正体をついにつきとめて120年に渡る論争に終止符を打った研究書『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』と『それからのエリス』を読んで、本書を再読してみました。 留学先で孤独に苦…

アンドロイドの夢の羊(ジョン・スコルジー)

楽しいSF作品です。もちろん、P・K・ディックへのオマージュに溢れています。 地球人類とニドゥ族の貿易交渉の席上で、なんとも臭い事件が発生。内容的には笑えるものの、笑えない結果となった事件が、惑星間の戦争に繋がりかねない危機を引き起こします…

最後の間者(岡田秀文)

堺を発った小荷駄隊が奇襲を受けたと知った信長から「安土城に潜む間者を一掃せよ」との命令を受けた村井貞成は、子飼いの忍びである蛭沼に捜査を命じます。 一方で毛利家に雇われて織田家の御用部屋に入り込んだ忍びの市平は、危険を犯しながら織田家の情報…

極限捜査(オレン・スタインハウアー)

共産圏に取り込まれてソ連の監視と統制の下で生きざるを得なかった、東欧の架空の国を舞台にした連作警察小説である「ヤルタ・ブールヴァード」シリーズの第2作にあたります。 本書の時代はスターリンの死から3年後、解放を求めた隣国ハンガリーがソ連軍に…

満開の栗の木(カーリン・アルヴテーゲン)

「北欧ミステリの女王」による新作とのことですが、本書は決してミステリではありません、ミステリ的な要素はあるものの、それはどんなジャンルの小説にだって共通のこと。本書で描かれるのは、再生の物語なのです。 スウェーデン北部ノルランドの寒村でホテ…

ベルリン・コンスピラシー(マイケル・バー=ゾウハー)

ロンドンのホテルで寝たはずのアメリカの実業家ルドルフが、目覚めた場所はベルリンでした。しかも彼は、62年前の第二次大戦直後に5人の元SS将校を殺した罪で逮捕されてしまいます。彼は収容所を生き延びたユダヤ人であり、ナチスに直接復讐を果たそう…

信長の暗号(中見利男)

宣教師ヴァリニャーノが織田信長から託された屏風絵の裏に書かれた「いろはうた」は、信長がローマ教皇につきつけた挑戦状でした。しかし信長死後も暗号を解き明かせないバチカンは、密使オルガンティーノを日本に送り込みます。 漂着したオルガンティーノは…

言語都市(チャイナ・ミエヴィル)

地理的に同一の場所にある2つの都市国家を描いた、前著『都市と都市』以上に異質な世界です。 宇宙の裏側に存在する「イマー」という空間を利用した宙間旅行とか、有機物や生物を駆使した異星での生活などのガジェットは理解の範囲内ですが、重要ではありま…

第六ポンプ(パオロ・バチガルピ)

『ねじまき少女』の著者が描く未来像は、もちろんディストピアなのですが、そんな中でも必死に生きていく人々の姿には、かすかな希望が感じられるのです。「カロリーマン」と「イエローカードマン」は『ねじまき少女』と同じ世界です。 「ポケットの中の法」…

インドへの道(E.M.フォースター)

1920年代、イギリス支配下のインド。支配者と被支配者の間に、心の交流は成立しえたのでしょうか。 チャンドラポアという小さな町を訪れた2人のイギリス人女性。年配のムア夫人は、同行の若い女性アデラを、現地で判事を勤める息子のロニーに娶わせよう…

大誘拐(ピーター・ドリスコル)

「哀愁と熱狂に満ちた」70年代の香港。解放前の中国に対する最前線基地。各国スパイ活動の拠点。東南アジア各国の民族解放活動。ベトナム戦争からの脱走兵。高級ホテルと怪しげな地域の格差。さまざまな色の光と、さまざまな度合いの闇がせめぎあう街。 か…

劒岳 点の記(新田次郎)

「点の記」とは「三角点の設定記録」のことだそうです。三角点標石を設定した年月日、人名、道順、人夫費、宿泊設備、飲料水等の必要事項を集録した記録であり、国土地理院の永久保存資料とのこと。山岳小説の大家による本書は、日本最後の未踏峰北アルプス…

復讐はお好き?(カール・ハイアセン)

主人公は、結婚記念旅行のクルーズ船から、夫によって夜の海に突き落とされた妻ジョーイ。近くの島に隠棲している元検察局調査官ミックによって奇跡的に救出されたジョーイは、自分を殺そうとした夫への復讐を決意します。 そもそも何故、夫のチャズは妻の殺…

アルゴ(アントニオ・メンデス)

1979年11月。革命直後のイランで発生したアメリカ大使館占拠事件の際に、密かに大使館を脱出してカナダ大使館に匿われた6人のアメリカ人職員がいたのです。日に日に危険が高まる彼らを救出するためにCIAがとった作戦は、奇抜なものでした。元CI…

羅生門 蜘蛛の糸 杜子春(芥川龍之介)

なんとも懐かしい作品です。以前に読んだのは、中学生の頃でしょうか。 まずは、本書に含まれている作品を列挙しておきましょう。「羅生門」、「鼻」、「芋粥」、「或日の大石内蔵助」、「蜘蛛の糸」、「地獄変」、「枯野抄」、「奉教人の死」、「杜子春」、…

萌神分魂譜(笙野頼子)

『金毘羅』と『海底八幡宮』を繋ぐ小説です。 「客人権現(まろうどごんげん)」は究極の「萌神」です。性的な要素をいっさい持つことなく、ひたすら姫を愛し続け、姫に尽くし続ける、本物の身体を持たない神。「千客万来」を悲しく願う娼婦たちに信仰され、…

賤ケ嶽(岡田秀文)

『太閤暗殺』では秀吉暗殺陰謀をめぐる駆け引きを、『秀頼、西へ』では太閤の遺児をめぐる家康と島津の駆け引きを、「歴史フィクション」として描いた著者のこと。信長死後、天下が秀吉の手に落ちるまでの群像劇である本書にはどのような「仕掛け」があるの…

ゴリアテ(スコット・ウエスターフェルド)

英国海軍が誇る巨大飛行獣リヴァイアサンは、極東戦線で戦うべく、イスタンブールを後にして東に向かいます。しかし、シベリアのツングースカで脅威の光景を目の当たりにし、その状況を引き起こしたという電磁兵器ゴリアテを建設中という天才科学者ニコラ・…

ベヒモス(スコット・ウエスターフェルド)

20世紀初頭の世界を舞台にした「スチームパンク・ロマン」のシリーズ第2弾。イギリスなど遺伝子操作技術を駆使する「ダーウィニスト」国家群と、ドイツなど機械工学を発展させた「クランカー」国家群の世界大戦において、オスマン・トルコ帝国の行方が焦…

リヴァイアサン(スコット・ウエスターフェルド)

1914年、ヨーロッパではふたつの勢力が拮抗していた。遺伝子操作された動物を基盤とする、英国などの「ダーウィニスト」と、蒸気機関やディーゼル駆動の機械文明を発達させたドイツら「クランカー」。両者の対立は深まり、オーストリア大公夫妻の暗殺に…