りぼんの読書ノート

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大誘拐(ピーター・ドリスコル)

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「哀愁と熱狂に満ちた」70年代の香港。解放前の中国に対する最前線基地。各国スパイ活動の拠点。東南アジア各国の民族解放活動。ベトナム戦争からの脱走兵。高級ホテルと怪しげな地域の格差。さまざまな色の光と、さまざまな度合いの闇がせめぎあう街。

かつてベトナム戦争の報道で名を馳せた海外特派員アランは、仕事と家庭を失くして酒に溺れる日々をおくっていました。三流新聞社からもクビを言い渡された時に、以前の恋人エイルサと再会。彼女の夫がCIAの高官と知って奇想天外なアイデアが閃きます。

そのアイデアとは「誘拐計画」。被害者と顔を合わせることもなく、金の受け渡しすら行わないという前代未聞の計画のポイントは、誘拐の実行だけを行って、それ以外の部分は某民族解放戦線に委ねて政治誘拐を偽装するということでした。

しかし完璧だったはずの計画は少しずつ歪みをみせはじめ、アランの一味は追い詰められていきます。仲間を失いながらも、台風を衝いて香港からフィリピンに航海したものの、国際政治の現実はアランらの想像を上回っていました。中国の政治委員を操る大物CIAスパイと、中国共産党の関係の真相がドラマチックです。結局、一番したたかだったのはエイルサってことなのですが・・。

2014/3