りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

インドへの道(E.M.フォースター)

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1920年代、イギリス支配下のインド。支配者と被支配者の間に、心の交流は成立しえたのでしょうか。

チャンドラポアという小さな町を訪れた2人のイギリス人女性。年配のムア夫人は、同行の若い女性アデラを、現地で判事を勤める息子のロニーに娶わせようと考えていました。アデラは、イギリス人たちの傲慢とも言える特権意識と、それに反発するインド人たちの複雑に絡んだ感情や思惑を感じつつも、インドの未知の魅力に惹きこまれていきます。

しかし、親切なインド人医師アジズに誘われてマラバー洞窟を訪問した際に事件が起こります。洞窟内の反響音に恐怖を感じたアデラは1人で下山し、なんとアジズに乱暴されたと錯覚してアジズを訴えるのです。アジズを良く知るイギリス人教授フィールディングやムーア夫人は異を唱えたものの、裁判は始まってしまい、インド人たちの間で反英感情も高まっていきます。

そんな中で自分の錯覚に気付き、証言台で突然アジズの無罪を認めたアデラ。しかしアジズが、彼女の勇気ある証言と友人の支援に感謝するまでには、長い時間がかかってしまいます。帰国したアデラがフィールディングと結婚したという誤解が、率直な謝意を妨げていたのでした。

ストーリー的にはわかりにくい小説です。最後の部分などは全く不要とも思えます。西洋の論理と東洋の混沌との融合に失敗したようにも思えます。全編を通じて流れるヒューマニズムの精神と、個々の人物の思いなどのデティルは素晴らしいのですが・・。せっかくの「天使が足を踏み入れるのをためらう場所」に「愚か者は殺到する」という名文句も、すわりが悪いように思えるのです。英文学の大家であるものの、私には偉大さを理解しにくい作家なのです。

2014/3