
戦国時代に北九州で覇を唱えた大友家のサーガの第1作は、『大友二階崩れ』でした。その時すでに大友最強の将であった戸次鑑連(後の立花道雪)は、その後の作品でも大友家を守る最後の砦として随所に登場しています。本書は、その戸次鑑連が、遠く離れた武田信玄からも畏怖される「戦神」となるまでの物語、
もともと大友家の支流として豊後の最有力御家人であった戸次氏は、一時没落していたものの、鑑連の父・親家の代で一城を得るまでに勢力を回復。しかし大友宗家から預かっていた愛息を戦闘で死なせた罰として、再び零落の憂き目にあってしまいます。反乱人の一族から得ていた妻も死に追い込まれる中で、月足らずで生まれたのが鑑連でした。幼いころから戦の才能を発揮した鑑連は、戸次氏再興のために戦場に出続け、不敗神話を作っていくのです。
本書は、当時の大友家で最大の勢力を誇っていた入田氏との確執をメインストーリーとして描かれていきます。入田氏から奪うようにして娶った幼馴染の妻・お道とは、子を得ることは叶わなかったものの幸福な家庭を築きあげ、多くの有力家臣にも恵まれて、武将として恵まれた境遇に達することができたのですが、そこで過酷な運命に見舞われます。それは入田氏が謀叛人とされるに至った「大友二階崩れの変」でした。お道は一族とともに殉ずる覚悟で、実家の城へと向かうのですが・・。
歴史小説には「史実」という制約があるわけですが、ついに勝者とはなり得なかった大友家の資料は多く残されてはいないとのこと。それだけ作家が想像力を羽ばたかせる予知があるわけですが、「喜怒哀楽、艱難辛苦、生き老病死、愛別離苦」をぎっしり詰め込んだ、疾風感あふれる作品に仕上げたのは、もちろん著者の力量です。
2026/8





