りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

2016/11 ブラインド・マッサージ(ビー・フェイユイ)

今月は、シリーズの途中とか上巻だけとか、読み切っていない作品のほうに秀作が多かったようです。まとめて次点に入れておきました。最終評価は最後まで読んでから。 1.ブラインド・マッサージ(ビー・フェイユイ) ブラインド・マッサージ」とは、盲人に…

翼をください(原田マハ)

社主から記者失格の烙印を押された新米記者の翔子は、記者生命をかけて、社主が尊敬する先輩という「山田順平」なる人物の取材に臨みます。彼は、70年前に新聞社が主催した「ニッポン号」による世界初の世界一周飛行に随行したカメラマンでした。当時の写…

いのちなりけり(葉室麟)

「佐賀藩出身の男女が数奇な運命に翻弄されながら再会を果たす物語」である本書は、「葉隠」成立に至る「前史」ともいえそうです。「葉隠」の有名な言葉である「武士道とは死ぬことと見つけたり」と「忍ぶ恋こそ至極の恋」という2つの精神が、本書の中で見…

ケイン・クロニクル 炎の魔術師たち 3(リック・リオーダン)

『パーシー・ジャクソン・シリーズ』で古代ギリシャの神々を現代世界に登場させた著者が、エジプトの神々を扱ったシリーズです。第2シリーズの最終作ですが、まだこの後も続きそうです。 古代エジプトで太陽神ラーに封じ込められた、混沌神アペブの復活まで…

幽霊海賊(ウィリアム・ホープ・ホジスン)

100年以上も前、ウェルズやドイルと同時代に「ホラー小説」を書いていた著者の、「ボーダーランド2部作」といわれるシリーズの1作です。 本書で扱われる「異世界との境界」は海。サンフランシスコで仕事にあぶれていた主人公が乗り組んだ船には、気味の…

遊仙譜(南条竹則)

『酒仙』や『鬼仙』など、日本では珍しい「仙人小説専門家」といえる著者の作品です。 中心となるのは、蓬莱島に暮らす美しき仙女・玉英。仙界でも指折りの神通力を持ち、西王母からも覚えがめでたいものの、無類の酒好き。東に銘酒ありと聞けば行って一盞を…

縁は異なもの(松井今朝子)

『老いの入舞い』に続く、「麹町常楽庵月並の記」のシリーズ第2作です。元大奥に勤めていた庵主志乃と、新米同心の仁八郎の周囲で起きる事件は、次第に血生臭いものになっていきます。 「宝の持ち腐れ」 蔵から消えた高価な掛物の謎を、かつて大奥で「失せ…

ザ・カルテル 上(ドン・ウィンズロウ)

大傑作の『犬の力』で描かれた、メキシコの麻薬王アダン・バレーラと、DEA捜査官アート・ケラーの30年に渡る闘争は、終わってはいませんでした。待望の続編の誕生です。 アメリカからメキシコの刑務所に移されたアダンは、特別待遇のもとで麻薬組織に指…

クロコダイル路地 1(皆川博子)

第1巻と第2巻を一気読みしたかったのですが、図書館に頼っているとなかなかそうもいきません。第2巻がまわってくるのは来月以降になりそうです。 フランス革命期を舞台にした、伝奇ロマンの第一部の舞台はロワール川の河口に栄えた貿易都市ナント。パリか…

くれなゐの紐(須賀しのぶ)

大正末期の浅草で、男子禁制の少女ギャング団に女装して入団した少年・仙太郎の目的は、行方不明になった姉のハルを探すこと。地方の名家へと嫁ぐ前日に自殺を装い、「浅草十二階」こと「凌雲閣」とだけヒントを残して姿を消した姉は、やはり浅草にいるので…

ペルーの異端審問(フェルナンド・イワサキ)

タイトルを見る限りでは、「本国スペインよりも苛烈であったという南米ペルーの異端審問の実態を考証するノンフィクション」と思えてしまいます。実際そうなのですが、本書を貫いているのはユーモア精神なのです。 リマ生まれの作家・歴史学者である著者が、…

大正箱娘(紅玉いづき)

時は大正、ロマンの時代。しかし「青鞜運動」などは帝都だけのできごと。地方の女性は、まだまだ古い因習に閉じ込められているのです。女性であることを隠して新聞社で働く新米記者の英田紺と、どんな箱も開けることができるという「箱娘」こと回向院うらら…

ヒーローインタビュー(坂井希久子)

大阪に転勤してきて、関西の阪神ファンの生態にも少々詳しくなりました。あるファンは「シーズン開幕前が一番楽しい」と言います。チームと個人の成績について希望的に観測できるのが開幕前であり、開幕後は夢の実現確度が下がっていくだけだというのです。…

虹猫喫茶店(坂井希久子)

「猫の世話をするだけの簡単なお仕事」という求人募集を見て、喫茶虹猫のバイトに応募した獣医大学1年生の主人公・翔の思惑はいきなり狂わされてしまいます。「ここは猫カフェではなく、猫の引き取り手を探す紹介所」という美貌の引きこもり店長・サヨリさ…

エターナル・フレイム (グレッグ・イーガン)

「空間軸と時間軸を交差させる」という物理法則を導入することによって、新しい世界を生み出してしまった「直交宇宙シリーズ」の第2作です。本書では、第1作の『クロックワーク・ロケット』で、宇宙的規模での天体消滅から母星を救うために超巨大宇宙船「…

ブラインド・マッサージ 畢飛宇(ビー・フェイユイ)

「ブラインド・マッサージ」とは、盲人によるマッサージのこと。南京のマッサージ店で働く盲目のマッサージ師たちの群像劇は、中国でベストセラーとなり、映画化もされました。 南京の「沙宗琪マッサージセンター」は、上海のマッサージ店に出稼ぎにきて苦難…

犬の心臓・運命の卵(ミハイル・ブルガーコフ)

ウクライナ生まれのロシア人にとって、革命後の内戦期は生きることが難しい時代だったようです。首都キエフの支配者は、ウクライナ人民共和国、赤軍、ウクライナ国、ドイツ帝国、白軍と次々と変わり、当時20代の青年であった著者も、何度も異なる軍隊に勤…

あなたを選んでくれるもの(ミランダ・ジュライ)

孤独のさまざまな姿を描きながら、孤独を介しての繋がりという裏返しの希望を期待させてくれた『いちばんここに似合う人 』に続く作品は、「インタビュー集」というノンフィクションでした。映画監督でもある著者は、行き詰った脚本執筆から逃れるために、フ…

けさくしゃ(畠中恵)

「けさくしゃ」とは「戯作者」のこと。文化文政から天保の時代に、『偽紫田舎源氏』などのヒット作を生み出した柳亭種彦を主人公にした「お江戸人情ミステリ」。主人公のキャラが「病弱なハンサム」というので『しゃばけ』と似た雰囲気もあるのですが、こち…

妻の超然(絲山秋子)

3人称で綴られた「妻の超然」、1人称で綴られた「下戸の超然」、2人称で綴られた「作家の超然」という、3作の中編からなる作品です。「超然」とは無関心な態度のことなのか。部外者であることなのか。それとも強靭な精神力のたまものなのか。なかなか奥…

謎の毒親(姫野カオルコ)

著者が実際の体験をもとにして著した「相談小説」です。小学校の近くにあった書店に立ち寄った際、そこが近所の児童からの相談コーナーを開設していたことを思い出した著者が、子ども時代に謎だった不思議な親の言動について相談を試みるという物語。歳を重…