りぼんの読書ノート

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縁は異なもの(松井今朝子)

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老いの入舞いに続く、「麹町常楽庵月並の記」のシリーズ第2作です。元大奥に勤めていた庵主志乃と、新米同心の仁八郎の周囲で起きる事件は、次第に血生臭いものになっていきます。

「宝の持ち腐れ」
蔵から消えた高価な掛物の謎を、かつて大奥で「失せ物さがしの名人」と呼ばれた志乃が、見事に解決。しかし失せ物の真相が「心のかけ違い」であったということが、この後の事件にも尾を引いていきそうです。

「心の仇」
常楽庵を訪ねてきて「自分は遠からず殺されそうな気がする」と言い残していった陰気な男が、死体となって発見されます。手代との仲を怪しまれた未亡人に疑いがかけられるのですが・・。この事件もまた、人間心理の奇妙さが鍵でした。「心の仇は心なりけり」なのです。

「塗り替えた器」
志乃のもとに行儀見習いに通っていたおつねに縁談が決まった途端、江戸で続出していた「女を突き飛ばして髷を切る」という珍事件の被害にあってしまうのですが・・。

「縁は異なもの」
頭の回転が速く気が強いものの少々危うい感じもあるおきしに、縁談が舞い込んだものの、その相手が斬殺されてしまいます。「わたくしが、敵を討ちます」と覚悟を決めたおきしに、志乃は己の過去を思い合わせるのですが・・。

本書では、志乃の過去が明らかになり、仁八郎には恋の兆しが見られるのですが、進展するのでしょうか。続編もありそうです。

2016/11