2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧
幼くしてチベットを追われ、インドを拠点に活動を続けているダライラマ14世は有名ですが、本書の主人公は、やはりチベット仏教の活仏であるパンチェンラマ。といっても、ダライラマとチベット亡命政府に「転生者」として認定された直後に、中国政府に拉致…
もともとドラマの原作として書かれたとのことで、登場人物のキャラがあざといくらいに立っています。自分探し中の長谷川桃子が、求人広告で見つけたバイト先は、変人そろいで事件や事故現場専門の清掃会社でした。いきなり連れていかれた仕事は、殺人事件の…
「Deep Purple」の「Smoke on the water」という曲をご存知でしょうか。70年代ハードロックの代表曲ですから、力強いギターのイントロくらいは聞いたことがあるのではないかと思います。 1995年。阪神淡路大震災が起こり、オウム真理教事件が起きた年…
冒頭に引用されている言葉が印象的です。「黒人がいなければ、ヨーロッパ系アメリカ人は「白人」ではなかったろう。彼らはただアイルランド人、イタリア人・・その他もろもろであり続けて、階級・民族・性別の闘争を繰り広げていたであろう。」 この本では、…
ベルさんが紹介してくれた本です。副題に「15世紀末、ミラノ、レオナルドの愉悦」とあるように、ミラノ時代のダ・ヴィンチを主人公としたミステリー。といっても、史実の謎に挑むような「本格歴史ミステリー」ではなく、ここで解かれる謎は、万能のルネサ…
スペイン遠征に向かう直前の1808年、絶頂期にある皇帝ナポレオンが、ポーランド人の愛人マリー・ヴァレフスカに、自らの半世を語ります。寝物語の動機というのが、愛人から褒めてもらって自信を取り戻すため、というのが笑っちゃうのですが、物語はよく…
『ジュラシック・パーク』では、血液から恐竜の遺伝子を取り出してみせたクライトンですが、それから17年たった現在では、遺伝子に関する問題は現実のものとなってきています。 本書のメインストーリーは、癌に耐性がある男性の遺伝子特許を、彼が治療を受…
3つの時空で展開される、ひとりの少女の物語。彼女の名前は「蒼井そら=ブルースカイ」。西暦1627年、魔女狩りの嵐が吹き荒れるライン川沿いのドイツの町で。西暦2022年、シンガポールで製作されている、3Dワールドの中で。西暦2007年、現代…
最近、NHKでドラマ化されたそうですね。未読でしたので、手にとってみました。 やはり、東北の日本海側にある海坂藩が舞台なのでしょうか。筆頭家老・桑山又左衛門の許に、果し状が届く場面から物語は始まります。相手は、かつては同じ部屋住みの身であっ…
小説家的な構想力によって歴史をドキュメンタリー風に展開した小説です。主人公は、1860年代のロシアで、農奴解放をはじめとする改革を断行し、ロシアを近代的な立憲君主国家へと導こうとしながら、ナロードニキによって1881年に暗殺された、アレク…
「ぼくは今、息子の頭に銃を突きつけて殺そうとしている」とはじまる本書は、ステキな出会いがもたらした素晴らしい息子が手のつけられない不良青年に変わってしまった理由については、ほとんど触れてはくれません。 ただ、取り返しのつかない過去と、変えよ…
『ミラノ霧の風景』で紹介されていた詩人、ウンベルト・サバをはじめとして、多くの文学者の記憶を秘めた街・トリエステをひとりさまよい歩く表題作にはじまるこのエッセイ集は、亡き夫の家族や親族との出会いや別れを振り返る「ある家族の肖像」となってい…
「いまは霧の向こうに行ってしまった友人たちに、この本を捧げる」と後書きにあるように、短かった結婚生活を挟んで、20代から40代までの13年間をすごした、ミラノを中心としたイタリアの知人たちとの思い出を綴った本です。 夫の親しい友人で古典学者…
公開中の映画の原作ですね。ただ、映画化を意識しすぎたのか、あまりにも正統ファンタジーっぽい内容で、『アナンシの血脈』や『グッド・オーメンズ』のような、ニール・ゲイマンらしいヒネリや遊びは、あまり感じられません、 イギリスのどこかにあるウォー…
リビアの政治体制の下で翻弄される家族の姿を、回想の形で、9歳の少年の視点から描いた本です。外交官であった作者の父親も、リビアの秘密警察に捉えられて消息不明といいますから、自伝的要素の濃い小説なのでしょう。 裕福な父と美しい母に守られていた少…
昨年のノーベル文学賞作家による、自伝的小説です。ニューヨークに3年住んだ以外は、ずっとイスタンブールで暮らし続けて、この街の全てを知った上で、この街を愛し続けている著者が、自らの人格形成に大きく影響を与えたイスタンブールの「憂愁」を描きき…
享保期の江戸を騒がせた「辰巳屋疑獄事件」の顛末記。歌舞伎の演目にもなっているという、有名な事件だそうです。大阪の炭問屋であった辰巳屋の跡目相続をめぐる近親間の対立が、なぜ奉行所を巻き込み、死罪4人を出すほどの大事件となったのかを克明に描い…
短編のみを350編も書き続けた著者の作品が、17編収められています。2006年の「このミステリーがすごい!」海外編の第1位となった本。どの作品も、気の利いた着想が、スマートな切れ味で仕上げられていて、後味も悪くない、上質のショートショート…
イギリス東部の沼沢地の歴史と、家族の精神の底流の繋がりを描いた『ウォーターランド』に続いて読んだ、2作目のスウィフト作品です。ブッカー賞受賞作。 「おれが死んだら、マーゲイトの海に撒いてくれ」とのジャックの遺言を叶えるために集まったのは、年…
新宿二丁目の無認可保育園「にこにこ園」を切り盛りする園長、ハナちゃんこと花咲慎一郎は、その場所柄、風俗産業で働く女性たちの子供たちを世話するので手いっぱい。今日も、ヤク中で未婚の外国人売春婦が、子供を連れて姿をくらましてしまったことを心配…
しろねこさんのブログで紹介されていた本です。本書は1951年の出版というから、50年以上も前に書かれた本ですが、いまだにみずみずしさを失わず、読者を歴史の旅にいざなってくれます。 犯人追跡中にドジをして足の骨を折り、退屈な入院生活を余儀なく…
beckさんのブログで紹介されていた本です。戦国時代を題材にした小説は、既に書き尽くされている感がありますが、加藤廣の『本能寺三部作』や本書など、アイデアは尽きないものだとつくづく感心してしまいます。 淀君・秀頼の母子は、大阪城落城とともに絶命…
10月は期せずして、ナチスのよるユダヤ人虐殺に関係した本を多く読むめぐり合わせとなりました。W.G.ゼーバルトの2冊をはじめとして、1位とした『ヒストリー・オブ・ラブ』や2位の『本泥棒』のテーマも、その問題に深く関係しています。誰もが想像…
不倫相手の家に忍び込み、生後6ヶ月の赤ん坊を連れ去った希和子。堕した自分の子につけるはずだった「薫」という名前をその子につけて、5年近くも逃亡の日々をおくるのですが、やがて逃げ切れなくなる日が訪れます。 十数年後、19歳になった恵理菜には自…
アリス・マンローさんが70年代から80年代にかけて書いた、比較的初期の作品が収録された短編集です。後の『イラクサ』に見られる、一瞬の出来事が永遠と対峙するかのような鮮烈さには及ばないようですが、この段階で既に「マンローワールド」は出来上が…