りぼんの読書ノート

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京都鷹ケ峰御薬園日録2 師走の扶持(澤田瞳子)

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京都鷹ヶ峰にある幕府直轄の薬草園で働く21歳の元岡真葛を主人公とする、シリーズ第2作です。前作ふたり女房のラストで、当代きっての本草学・小野蘭山の薬物採取の旅への同行を決めた後の物語が描かれていきます。

糸瓜の水」
小野蘭山や弟子の延島香山とともに房総を回り、江戸に戻った際のエピソードです。江戸の御薬園に挨拶に伺った真葛は、小石川御薬園を預かる岡田家と、隣の芥川御薬園を預かる芥川家の争いに巻き込まれてしまいます。道端で倒れていた岡田家奉公人の母親を、緊急事態として芥川家に連れていって介抱したことが、仇になってしまったのでしょうか。両家の対立のむなしさと、愚かな母親の慈愛が対照的です。

「瘡守」
帰京の途中で熱田神宮門前町に宿泊した真葛は、旅籠の夫人が梅毒にかかっていることに気付きます。夫からも邪険にされているというのですが、夫の真意は別にありました。病に罹った妻が夫に求めるものは、将来への蓄えなどではないのです。

「終の小庭」
真葛の帰京のお供をした喜太郎は、長年勤めあげて娘夫婦の家で隠居生活をすることになっていました。長年放置していた娘夫婦に受け入れてもらえるのかどうか案じていた喜太郎でしたが、案の定、居留守をつかわれてしまいます。しかしそれには意外な理由があったのです。喜太郎は、我が身を顧みずに娘夫婦を守ろうとするのですが・・。

「撫子ひともと」
義姉の初音が持ってきた縁談の相手は、真葛の患者である16歳の娘を身籠らせたというのです。真相を探るために断るはずだった見合いの場に出た真葛は、娘の嘘を見抜くのですが・・。「殿方に添うのもひとつの生き方であり覚悟が必要」なのです。

「ふたおもて」
もと加賀藩医だった薬種屋の主人は、落ちぶれて旅籠の飯炊き女に身をやつしていた、かつて世話になった医師の妻の面倒をみるのですが、毒を盛られてしまいます。憎悪だけを心の支えに生きてきた女性の心を開くのは難しいのですが、この主人は善人過ぎるかも?

「師走の扶持」
真葛の生家である棚倉家は、深刻な後継問題を抱えているようです。名を隠して叔父を診察した真葛は、厳格な祖父が彼女の両親を既に許していることに気付きます。しかし長崎に向かったまま消息を絶った父親の行方はまだ知れません。このシリーズには、さらに続編がありそうです。

2018/2