りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2018/2 オープン・シティ(テジュ・コール)

「口訳万葉集折口信夫)」、「百人一首(小池昌子)」、「新々百人一首丸谷才一)」が収録されている、池澤夏樹編「日本文学全集 第2巻」を読みました。日ごろ縁遠い和歌の世界の奥深さを、垣間見させていただきました。


1.オープン・シティ(テジュ・コール)
ナイジェリア出身の作家が、都市を彷徨する主人公に託して人種間の不協和音に対する想念を巡らせていく作品です。防壁が取り去られた「ウォール街」にある「9.11」の廃墟跡で頂点に達する著者の思いは、「オープン・シティ(無防備都市)と宣言したところで精神的な破壊は人知れず行われる」ということのようです。

2.神秘大通り(ジョン・アーヴィング)
メキシコのゴミ捨て場で育ちアメリカに移住して作家となった主人公の、フィリピンへの感傷旅行は何を目的としていたのでしょう。いつしか道連れになった不思議な美人母娘に翻弄されながら、少年時代の記憶を呼び起こしていく主人公が行きつく先は、「聖」と「世俗」が混然一体となって進んでいく、人生というものに対する深い思いだったようです。

3.センセイの鞄(川上弘美)
今さらですが、2001年に出版された著者の代表作を読みました。37歳独身女性が、老齢の恩師とゆったりとした交際を始める物語は、独特の空気感を醸し出しています。本書が世の中高年男性を舞い上がらせた理由は明白ですが、女性読者からも受け入れられたキーワードは「癒し」だったのかもしれません。



2018/2/27