2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧
「読書の秋」にもかかわらず、読書量が落ちています。理由は明白。読書に割く時間が減っているから。秋は眠い! 1.歩道橋の魔術師(呉明益) かつて台北に存在していた一昔前の巨大ショッピングモールで育った少年の記憶は、マジック・リアリズムの世界の…
者が息子をモデルとしたという少年ハル。自分が興味のあることしか目に入らないせいで周りと違ってしまう、「生きにくい」タイプの子。そんな子が「幸せになれる、喜びを見出せる世界を書きたい」という思いで書き始めた小説だそうです。 「愛する人を見つけ…
1961年から1992年まで台北に、「中華商場」という巨大ショッピングモールが存在していたとのこと。本書は、8棟の建物に1000軒以上の商店があったという「中華商場」が舞台であった少年期の思い出を綴った連作短編集です。 といっても、「三丁目…
7つの異なる物語による「協奏曲」は、どのようにリンクしているのでしょう。何が共通するテーマなのでしょう。伊坂さんのテクニックを楽しめる連作短編集です。 「首折り男の周辺」 首を折る手口で殺人を繰り返す殺し屋の存在をめぐって、隣人を「首折り男…
妻子を顧みず愛人と生活した日々を私小説風に描いた『火宅の人』は、無頼派作家・檀一雄の代表作となっています。しかし、そのモデルであった妻は、実生活の暴露をどう思っていたのでしょう。そして、最終的に愛人と別れた夫を、なぜ許すことができたのでし…
吉祥寺のコンビニでアルバイトをしながら探偵業を営む「バツイチ・息子アリ」の川庄を主人公とする、シリーズ第2弾。主人公のキャラのせいなのか、時代の要請なのか。『交渉人・遠野麻衣子シリーズ』とは異なり、なんとなくユルメの作品になっているようで…
下巻に入って、物語は疾走感を強めていきます。悲惨な事件に対する義憤に駆られた孝太郎は、異界から訪れた怪物・ガラに助力を求めて「力」を得るのですが、それは何をもたらすのでしょう。なぜかガラは孝太郎に対して何度も謝り、「狼」となっていたユーリ…
江戸の文政期を舞台にして大部屋女形・濱次の成長を描くシリーズの第5作。前作の『半可心中』では「ます目」が消えていたので不思議に思いましたが、今回は順番通りの「五ます目」です。まだ「上がり」というわけではありませんでした。 「代役」で好演を博…
人類の前に公然と姿を現した妖怪たちと人間が、打算と駆け引きによって共存している境界の街・真朱。絶世の美女にして全身の眼で真実を見透かす探偵・百目と、頼りない人間の助手・相良邦雄が、「人間性の限界」を探るような事件に挑む物語。 と思っていたら…
『魚舟・獣舟』の短編「真朱の街」の続編という立てつけです。人類の前に公然と姿を現した妖怪たちと人間が、打算と駆け引きによって共存している境界の街・真朱。 そこで探偵事務所を営むのは、絶世の美女にして全身に百の眼を持つ妖怪・百目。彼女の眼は、…
2014年1月に直木賞を受賞した著者のデビュー作です。20代のころに書いて、自分で出版社に持ち込んで門前払いされながらも自信を失うことなく、別の出版社では即決されたという「伝説」も紹介されていました。 主人公はミツコ。私立薔薇十字女子大英文…
地には花。空には聖星。猫や蛙、鼠などさまざまな動物のかたちを纏って生まれてくる人々。「不思議の国」のような世界にたったひとり、牙も毛皮も鱗もない「のっぺらぼう」として生まれた少女、ラブラック=ベル。異形の存在である少女は、自分と同じ存在を…
一生に一度だけ死者との再会を叶えてくれる「使者(ツナグ)」に依頼する人たちは、何を期待していたのでしょう。 突然死したアイドルを心の支えにしていたOLは、生きる気力を失いかけていました。年老いた母に癌を告知できなかった中年男性は、母に愛され…
映画「Catch me if you can」の原作である『世界をだました男』に続いて、やはりディカプリオが主演した「アビエイター」の原作と思しき作品を読んでしまいました。もちろん偶然です。 父親が遺した会社と財産をベースとする億万長者として、映画と飛行機に…
ディカプリオ主演で映画化された「Catch me if you can」の原作です。「20世紀最大の詐欺師」と呼ばれた男、フランク・アバネイルの半生記。こんな人が1960年代に実在していたのですね。 あるときはパンナムの副操縦士として、コックピットに出入りす…
ピストルを持つ見知らぬ男に「話をしてくれ」と脅される作家、孤独をまぎらわすように毎晩寝場所を変える男、人の言葉をしゃべる金魚、自爆テロで命を落とした末期がん患者、疲れ果てた神様の本音、安息日に食べるチーズ抜きのチーズバーガー・・。 イスラエ…
『家守綺譚』や『海うそ』など、「人と土地の結びつき」を描いてきた著者による「地名エッセイ」です。 タイトルの「鳥と雲」は理解できますが、「薬草袋」が謎ですね。著者は本書を「旅に持ち歩く薬草袋のなかの、いい匂いのハーブのブーケや、愛着のある思…
中途半端に「上巻」だけのレビューを書いてしまうのは、「下巻」をいつ借りられるのかわからないからです。相変わらず宮部さんの人気は凄いですね、図書館の予約に出遅れると、恐ろしいほどの順番待ちになってしまいます。 本書は『英雄の書』の続編にあたり…
『チーム・バチスタの栄光』に始まる一連のシリーズの最終章と位置付けられている作品です。 シリーズ前作『ケルベロスの肖像』においてAIセンターは炎上してしまったものの、むしろAI(死亡時病理診断)の認知度は上がったようです。相変わらず高階病院…
デビュー以来、『法律事務所』、『ペリカン文書』、『依頼人』、『レインメーカー』とメガヒットを飛ばし続けた著者ですが、もう旬はすぎてしまったのか、最近は映画化もされていません。個人的には自伝的な『ペインテッドハウス』が最優秀作品だと思ってい…
アフリカの架空の独裁国家で政変が起きる気配があるとのことで、イギリスの新聞社が派遣したのは、同姓の作家と間違われた男でした。 1938年の小説なので、本国との通信は無線による短文だけ。誤報や曲解は当たり前で、捏造だってアリの世界。各国の新聞…