りぼんの読書ノート

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ひと呼んでミツコ(姫野カオルコ)

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2014年1月に直木賞を受賞した著者のデビュー作です。20代のころに書いて、自分で出版社に持ち込んで門前払いされながらも自信を失うことなく、別の出版社では即決されたという「伝説」も紹介されていました。

主人公はミツコ。私立薔薇十字女子大英文科在籍中。名高い香水と同じ名前を持ち、盲腸の手術痕がうずく時、不埓なやつらに公衆道徳の鉄槌を下すという、強力な倫理観と超人的な能力を併せ持つスーパー女子大生。

勝手気儘な付属上がりの学友も、ボンボンの歯科大生も、レストランで傍若無人に振る舞う悪ガキと母親も、せっかくできそうになったカレを横取りした淫乱女も、バイト先のセクハラ親父も、教育実習先の天然ブリッ子女教師も、市民を放置したままの役人も、ミツコの怒りには懲らしめられてしまうのです。

林真理子さんの初期の作品と同じような匂いも感じますが、「バブル後」という世代の違いは歴然としていますね。著者は、オタク的なミツコの怒りも、笑い飛ばしているのです。ひょっとしたら、関東と関西の違いかもしれませんが。

2015/10