りぼんの読書ノート

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妖怪探偵・百目1(上田早夕里)

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魚舟・獣舟の短編「真朱の街」の続編という立てつけです。人類の前に公然と姿を現した妖怪たちと人間が、打算と駆け引きによって共存している境界の街・真朱。

そこで探偵事務所を営むのは、絶世の美女にして全身に百の眼を持つ妖怪・百目。彼女の眼は、ありとあらゆるものを見通し、人の心の奥底まで覗き込んでしまうのです。助手として、時々百目に寿命を吸われつつ、事件解決にこき使われているのは、人間の相良邦雄。

こう聞くといかにも「キワモノ」のようですが、扱われている事件は、人間と非人間の違いがどこにあるのか探っていくような性格のもの。子供を妖怪に奪われた母親。ロボットに恋するあまり凶行に走る妖怪。闇にまぎれて妖怪を抹殺して回る人間。それらの犯罪を引き起こしたものは、人間性の欠乏なのか、過剰なのか。

3巻で1シリーズとのことで、本書はまだ舞台背景と主要人物の紹介が中心のようです。百目と邦雄の探偵コンビだけでなく、争いごとを嫌いつつ妖怪と関わる刑事や、ある目的で妖怪の殲滅を目指す陰陽師なども登場。そして、近い将来の破滅が暗示されていきます。

日本の「バイオSF」に新潮流を持ち込んだ新鋭の著者のことですから、続巻での展開に期待しましょう。

2015/10