りぼんの読書ノート

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結婚のためなら死んでもいい(南綾子)

「三時のヒロイン」の福田麻貴さん主演でTVドラマ化された「婚活1000本ノック」が面白そうだったので、ドラマは未見ですが原作を読んでみました。とはいえ本書はドラマの原作となった作品を全面改稿・改題のうえで文庫化されたものですので、ドラマとの関係は微妙に違っているのかもしれません。

 

未婚で彼氏もいないまま37歳の誕生日を迎えた、売れない小説家の南綾子の前に登場したのは、63歳になった自分自身でした。生涯独身のまま惨めな晩年生活をおくっているという未来の自分の姿に衝撃を受け、綾子は死に物狂いで婚活を開始するのです。

 

しかし彼女の前に現れるのは、理想像から程遠い男性ばかり。しかし37歳の独身女性が高望みなどしていいものなのでしょうか。外見、年収、学歴、性格、センス、年齢などで男性の価値を秤にかけて良いのでしょうか。そもそも彼女は、結婚相手を探しているのか、恋愛相手を探しているのか、自分でもよくわかっていないようです。実りのない婚活に疲れ果てた綾子は、ついに自分の市場価値に気付いて妥協してしまうのですが・・。

 

しかしこれだけなら普通の物語。しかも男性目線で女性蔑視の物語でしかありません。ある事件をきっかけといsて物語のトーンは一変するのです。なぜ婚活市場では「結婚できない女性」ばかりが責められるのか。なぜ自由を手放して、心ときめかない相手と生涯を共にすごさねばならないのか。ユーモアある自虐的な語り口で覆い隠されているものの、実は本書は、婚活の行き着く先に老後や死を見据えているシリアスな小説なのです。男性にこそ読んで欲しい作品です。

 

2024/4