りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

三つ編み(レティシア・コロンバニ)

f:id:wakiabc:20210208083717j:plain

プロローグで「これは私の物語。なのに、私のものではない」と宣言される本書は、3つの大陸にまたがる3人の女性の物語。「女性としての尊厳や女性性の象徴」ともいえる髪を通して、交わるはずもない3人の人生がどのように関わり合っていきます。

 

インドでは不可触民で他人の糞便を掃除することを生業としているスミタが、6歳の娘ラリータのために村を出る決意をします。この村では娘を学校に通わせて読み書きを習わせることは叶わないのです。村人に捕まったら公開処刑は必至。彼女は怯える夫を置き去りにして、娘の手を引いて夜道を歩き始めます。

 

イタリアのシチリアでは、伝統的な家族経営の毛髪加工会社で働くジュリアが、父の事故を機に会社経営を任されます。しかしその会社は倒産寸前だったのです。彼女に再建のヒントを与えてくれたのは、密かにつきあっていたカシミール難民の男性でした。

 

カナダのモントリオールでは、シングルマザーの弁護士サラが、女性初のマネージング・パートナーの座を目前にして挫折を味わいます。乳癌の告知を受けて治療を開始したことが知られて、少しずつ重要な業務から外されるという扱いを受けてしまったのです。彼女は自分を偽ることをやめ、癌と戦い、彼女を阻害した陰湿な世界に挑む決意をします。

 

本書はフェミニズム小説ですが、彼女たちが戦う相手は男性ではありません。むしろ彼女たちに理解を示し、連携してくれる男性のほうが、物語で重要な役割を果たしているほど。男性優位社会という壁を乗り越えるには、男女ともにフラットな関係で共闘し合うことが必要であることを、本書は示しています。男性にも読んで欲しい作品です。とりわけ、ジェンダーギャップ指数順位でインドよりも下位に位置する日本において。

 

2021/3