りぼんの読書ノート

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妖怪探偵・百目3(上田早夕里)

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高度なテクノロジーと呪術が共存している未来社会。人間と妖怪もまた、打算と駆け引きによって共存するようになっています。そんな社会を象徴している境界の街・真朱が、危機に瀕しています。「穢れ」を餌にして巨大化し、人間も妖怪も全てを飲み込んでいく大妖怪「濁(だく)」に包み込まれてしまったのです。「濁」との因縁を有する陰陽師・播磨は、最後の対決へと向かいます。

その時、絶世の美女姿を有しながら、全身の眼で全てを観測し真実を見透かす妖怪・百目は、どう動くのでしょうか。また、妖怪に同情的な県警の忌島や、百目の助手で頼りない相良などの人間たちは、どうするのでしょう。

昨今の「妖怪ブーム」に便乗した「キワモノ」のようなタイトルですが、「バイオSF」に新潮流を持ち込んだ著者の作品ですので、プロットも表現もしっかりしています。異形の存在を扱いながら、多様な価値観の衝突と共存を図っていく展開には、なかなか深いものも感じます。「環境が激変する未来において異形化する人類」というテーマは、著者の得意とする所ですが、妖怪という存在もまた、未来からの照射なのでしょうか。

本書は「3部作の完結編」と思っていたら、「第1部完結編」だそうです。ということは、続編も出るのでしょう。相良にはまた登場して欲しいのですが・・。

2016/2