『ライラの冒険』シリーズ執筆の前に著者が綴った、ヴィクトリア朝ロンドンを舞台とする少女の冒険物語。ただし本書はファンタジーではありません。魔女やよろいグマなどは登場せず、人間には分身「ダイモン」などついておらず、主人公が「真理計」を読むなどの特殊能力を持っているわけではないのです。
16歳のサリー・ロックハートは、15年前のインド大反乱で母親を亡くし、数年前に海運業者だった父親を海難事故で失って以来、天涯孤独の孤児生活をおくっていました。しかし彼女の許に送られてきた、差出人不明の謎めいた手紙によって、物語が動き始めます。手紙にある「7つの祝福」とは何のことなのか。彼女に遺された遺産とは何なのか。そして怪しげな老婆や、ならず者たちが、彼女につきまとい始めるのです。
ディケンズや、コナン・ドイルや、バーネットの『小公女』のような物語です。タイトルが「マハラジャのルビー」なので遺産にるいては初めから想像がつくものの、サリーの生誕の秘密には驚かされました。このシリーズは第4弾まで出版されていますが、続巻を読む価値があるかどうか。微妙なところです。
2025/1