りぼんの読書ノート

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復讐者たち(マイケル・バー=ゾウハー)

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少年時代に建国時のイスラエルに移住し、大学教授にしてスパイ小説の巨匠となった著者による、「ナチス狩り」ノンフィクション小説です。

第1部は、戦争直後の欧州で、身分を隠して逃亡・隠棲を図ったナチスたちへの直接復讐の物語。イスラエルで編成されたもののドイツ侵攻を許されなかった「ドイツ大隊」や、諜報機関の前身組織などが、いち早く行動を開始したようです。

しかし、網にかからずに南米や中東に逃亡したナチも多数いたわけであり、第2部は、シュロイゼ(水門)、シュピンネ(蜘蛛)、オデッサなどと呼ばれたナチ戦犯の逃亡幇助組織の実態に迫っていきます。赤十字や宗教団体の寛大さや慈愛の精神まで利用されたとのこと。

そして、アイヒマンをはじめとする元ナチス戦犯たちを連行・処刑した過程や、ミュラー、メンゲレ、ボルマンらの追跡劇が描かれる第3部が、本書のクライマックス。ヴィーゼンタール、フリードマン、ラングバインらの「ナチ・ハンター」たちは、どのようにして元ナチスたちの居所を突きとめ、処刑したのか。なぜ執拗に復讐を果さなければならなかったのか。

著者は、ユダヤ人はニュルンベルク裁判にも関与できなかったとして、直接的な復讐・処刑を正当化していますが、このあたりは意見の分かれるところでしょう。もちろん、裁かれたのは戦争犯罪者という個人であることは言うまでもありません。

2016/2