りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

巨大訴訟(ジョン・グリシャム)

イメージ 1

デビュー以来、『法律事務所』、『ペリカン文書』、『依頼人』、『レインメーカー』とメガヒットを飛ばし続けた著者ですが、もう旬はすぎてしまったのか、最近は映画化もされていません。個人的には自伝的な『ペインテッドハウス』が最優秀作品だと思っていますが、やはり地味なのでしょう。

本書は、若手弁護士を奴隷のようにこき使う大手法律事務所を、突然飛び出したデイビッドの成長物語。朝からダウンタウンのバーで飲んだくれた後でたどり着いたのは、場末の弁護士事務所。弁護士はパートナーの2名だけ。他の弁護士事務所と交通事故被害者を奪い合って、保険金請求を引き受けるのが、メインの仕事。

収入は激減したものの、依頼人と接することができる仕事には満足していたデイビッドでしたが、事務所のパートナーが無謀にも薬害集団訴訟に加わろうとしたために、とんでもないことになっていきます。

メインの原告弁護団の尻馬に乗って巨額の和解金を得ることだけ考えていたのに、薬の無害性に自信を持つ巨大製薬会社は正面から訴訟を受けて立ち、しかも、デイビッドの事務所が起こした裁判を見せしめにすることにしたのです。法廷ではほとんど素人のパートナーたちが追い詰められて雲散霧消した後、孤軍奮闘状態のデイビッドは、ようやく一矢を返すのですが・・。

庶民派であることと、大金を稼ぐことを両立させるのが、最近の著者の流儀なのでしょうか。途中から話の展開が見えてしまいました。また、本筋ではありませんが、法廷を揶揄するような匿名記事をSNSにアップする人物は、現実にもいそうで、うんざりしますね。

2015/10