りぼんの読書ノート

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スクープ(イーヴリン・ウォー)

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アフリカの架空の独裁国家で政変が起きる気配があるとのことで、イギリスの新聞社が派遣したのは、同姓の作家と間違われた男でした。

1938年の小説なので、本国との通信は無線による短文だけ。誤報や曲解は当たり前で、捏造だってアリの世界。各国の新聞記者たちがルール無用の報道合戦を繰り広げ、ロシアやドイツのスパイの影もちらつき、謎の美女も登場するという大混乱の中でスクープをものにしたのは、ド素人の男だったのですが・・。

この当時の新聞は成長産業であり、戦争特派員は英雄的存在。この年に登場したスーパーマンの正体も、新聞記者ですしね。権力に立ち向かうマスメディアさえも笑いのめしてしまう姿勢が、ウィットに満ちています。現代の視点からは、アフリカ人の描写は差別的かもしれませんが、「文明国」の人たちの描写は、もっと失礼ですから、バランスは取れています(笑)。

さてこの新米新聞記者は、スクープこそモノにしたものの、勲章も美女も取り損ねて「元の木阿弥」になってしまいます。まあ、そんなもんでしょうね。

2015/10