りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2015/9 ステーション・イレブン(エミリー・セントジョン・マンデル)

今月は比較的「軽めの読書」でしたが、上位にあげた2冊は、テーマも文体もジャンルも異なっていながら、人間という存在に希望を感じさせてくれる作品でした。

ミステリ・ファンの間で評価が高かった『その女アレックス』は、もちろん高水準の作品でしたが、言われているほど「意外な展開」ではなかったように思います。
1.ステーション・イレブン(エミリー・セントジョン・マンデル)
「文明崩壊後の世界を描くSFサスペンス」というと、荒涼とした終末論的世界をイメージしてしまいますが、本書は「人間として生きること」の意味を問い詰めた作品です。パンデミックによって人類の99%が死滅してから20年後、亡くなった俳優に関係した人々の、それぞれの生き方が描かれていきます。「生きていられるだけでは不充分」なのですから。

2.エッフェル塔くらい大きな雲を呑んでしまった少女(ロマン・プエルトラス)
航空管制官のレオが、理髪師の老人に語り始めたのは、火山噴火の影響でヨーロッパ中の空港が閉鎖された日に、オルリー空港から飛び立ったひとりの女性の物語でした。その女性は、病状が悪化した少女を養女に迎えるべく、大至急モロッコに行く必要があったのです。「この話のすべては事実だ。なぜなら、最初から最後までぼくがこしらえたのだから」という、冒頭のエピグラフが効果的です。

3.その女アレックス(ピエール・ルメートル)
2014~2015年の各ミステリ・ランキングで1位を独占し、「6冠」に輝きました。美しい女性がパリの路上で見知らぬ男に誘拐されて監禁されるところから始まる物語は、どこに行きつくのでしょう。二転三転するプロットも、大きく揺れ動く「アレックス像」も楽しめる作品です。



2015/9/30