りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

コラプティオ(真山仁)

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現在の日本に最も不足しているものは、首相のリーダーシップと原発政策でしょう。本書はその2つの問題をテーマにして「処方箋」に迫った作品です。

国民に希望をもたらして復興政策を進め、国民から圧倒的な支持を受ける宮藤総理が打ち出したのは、「世界一安全な原発の輸出」による富国政策でした。フクシマの地で禁断の政策を宣言した総理の勇気に賛否両論が沸き起こったものの、停滞する日本の再生には他のオプションはないと言い切る総理の支持は揺らぎません。これは、プーチン型独裁者への道なのか。

物語は、首相を支える内閣調査官・白石と、首相の独裁化に反発する新聞記者・神林の若い2人の視点から語られます。原発輸出の裏では、ウラン入手を目的に政情不安定なアフリカの某国への支援と賄賂が進行しており、それがクーデタ-へと至るのですが、この程度は許容すべき必要悪と割り切れることなのか。白石は、日に日に強引さを増す首相に対してついに、引退を進言するのですが・・。

この小説は、白石と神林の成長物語ともなっています。白石に対しては老練の主席秘書官・田坂、神林に対しては伝説の記者・東條と、それぞれ怪物のような教育係がついているあたりが、小説の常道とはいえ上手くできています。しかも田坂と東條には、以前から浅からぬ因縁があったというのですから。

本書は、大震災以前に連載された作品に全面的な加筆修正を行なって単行本化されたといいますが、それを感じさせないくらいに自然な流れになっています。

2012/4