りぼんの読書ノート

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ふたつのしるし(宮下奈都)

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者が息子をモデルとしたという少年ハル。自分が興味のあることしか目に入らないせいで周りと違ってしまう、「生きにくい」タイプの子。そんな子が「幸せになれる、喜びを見出せる世界を書きたい」という思いで書き始めた小説だそうです。

愛する人を見つけることが、ひとつの幸せの形ではないか」という著者が作り出したのは、ハルより6歳年上の女性でした。頭がいいのに、周囲から浮かないよう息を潜めて育ってきた女性。彼女は社会人になってもまだ、自分の気持ちを表面に出せないまま、ひっそりと生き続けていたのです。

6歳の年齢差がある男女は、なかなか出会えません。数年ごとに2人の人生の場面を切り取りながら進んでいく物語は、やがて「時」を迎えます。それは、2011年3月のことでした。ようやくめぐり合った2人が、互いに「しるし」を感じたという奇跡はドラマチックですが、この著者の手にかかると自然な出来事のように思えてきます。

2015/10