りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

首折り男のための協奏曲(伊坂幸太郎)

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7つの異なる物語による「協奏曲」は、どのようにリンクしているのでしょう。何が共通するテーマなのでしょう。伊坂さんのテクニックを楽しめる連作短編集です。

「首折り男の周辺」
首を折る手口で殺人を繰り返す殺し屋の存在をめぐって、隣人を「首折り男」と疑う老夫婦と、「首折り男」に間違われた臆病な若者と、「首折り男」の保護を受ける苛められた少年の物語が綴られていきます。善意と悪意の境界線が問われているようです。

「濡れ衣の話」
復讐殺人を犯した男が乗ったタクシーの運転手は、「首折り男」だったようです。2人は奇妙な会話を貸すのですが・・。復讐殺人の罪は、無差別殺人よりも軽いのでしょうか。時空の捻じれで過去に戻れば、罪は消えるのでしょうか。

「僕の舟」
各作品に登場する黒沢探偵が登場。末期癌に犯された夫を介護中の老女は、黒沢に、50年前の初恋の人の捜索を依頼します。男は「if」にロマンを求め、女は「if」に現実の再確認を求めるものなのでしょうか。男女が同じ舟に乗る結婚が、「同床異夢」でなければ良いのですが・・。

「人間らしく」
クワガタを飼って生態の実験をするブリーダー。不倫した夫に離婚を言い渡した主婦。苛めを受けた中学生。普段は見ていないけれど、ときどき目を向けてくれる神様は、不正を正してくれる存在なのでしょうか。

「月曜日から逃げろ」
性悪なTVプロデューサーに弱みを握られた黒沢は、罠にはまったフリをして逆襲を試みます。映像の逆回転を用いたトリックが使われますが、本書の時系列も逆順なので注意が必要。

「相談役の話」
伊達藩に伝わる悲劇の伝説と同じようなプロットで、悲劇が起こりつつある会社の物語。初出は怪談本「幽」とのことですが、オチが見事すぎます。むしろ「笑える話」になってしまった?

「合コンの話」
参加者の思惑や事情が入り乱れる合コンの帰り道で、「首折り殺人」が起こります。犯人は合コン仲間の中にいるのでしょうか。ただし、混沌の中でも美しいメロディが際立つ瞬間があるのです。

2015/10