りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧

2025/11 Best 3

1.ペストの夜 上下(オルハン・パムク) 1901年、オスマン帝国領の架空の島ミンゲル島でペストが発生。はじめに派遣された疫学者は殺害され、妻の皇姪バーキーズ姫とともに派遣されたヌーリー医師が提案する感染防止策が、防疫に否定的なイスラム教団…

思ひ出の記(小泉セツ)

『八雲の妻(長谷川洋二)』の巻末に『思ひ出の記』が収録されていたので、再読しました。初読は、「小泉八雲記念館」に立ち寄った松江・出雲旅行の時ですから、もう10年前のこと。読書ノートに記録しなかったこともあり、かなり忘れていました。あらため…

八雲の妻(長谷川洋二)

2025秋に始まった朝ドラの主人公モデルが、ラフカディオ・ハーンの妻であった小泉セツとのことで、本書を読んでみました。ハーンについては。ラフカディオの生涯については、『旅する帽子(ロジャー・パルヴァース)』や『かくも甘き果実(モニク・トゥ…

藩邸差配役日日控(砂原浩太朗)

時代小説に新風を持ち込んだ著者による本書は、まるで現代のお仕事小説のようです。もちろん幕藩体制下の藩士と現代のサラリーマンとでは、背負っているものが圧倒的に異なるのですが。 本書の主人公である里村五郎兵衛は、7万石の中規模大名である神宮寺藩…

ペストの夜 下(オルハン・パムク)

1901年、オスマン帝国の東地中海領土ミンゲル島でペストが発生。妻の皇姪バーキーズ姫とともに派遣されたヌーリー医師が提案する感染防止策が、防疫に否定的なイスラム教団によって無効化されていく中で、海上封鎖されたミンゲル島は孤立。そして偶発的…

ペストの夜 上(オルハン・パムク)

トルコのノーベル賞作家による『白い城』と『わたしの名は赤』に次ぐ3冊目の歴史小説は、前2冊と同様にトルコの近代化とイスラム教の関りについて鋭い問いを投げかけた作品です。 時代はオスマン帝国末期の1901年。場所は東地中海に浮かぶミンゲル島と…

歌う丘の聖職者(ニー・ヴォ)

『塩と運命の皇后』に続く、架空の帝国を舞台とするファンタジーシリーズの第2弾。前巻同様に2作の中編から成っています。 「河畔の国へ」 歴史を記憶して語り継ぐことを務めとするシンギングヒルズ大寺院の聖職者チーは、帝国の辺境に位置する河畔の国を…

塩と運命の皇后(ニー・ヴォ)

歴史記録を使命とするシンギングヒルズ大寺院の聖職者たちは、歴史収集のために帝国各地を遍歴しています。そのひとりチーは、50年ぶりに封印が解かれた湖のほとりに立ち寄ります。そこはかつて北の国から嫁いれきた皇后インヨーが、世継ぎとなる男児を産…

文豪の愛した猫(浅水美保ほか)

先に読んだ『猫と罰(宇津木健太郎)』に、日本の文豪が飼っていた猫たちが登場していたので、こんな本を読んでみました。名作を残した文豪たちは、かなりの確率で猫と出会い、時には人生さえも左右されるほどの関係を築いていたようです。多いのでタイトル…

嵐の地平(C・J・ボックス)

家族と自然を愛する心優しいワイオミングの猟区管理官、ジョー・ピケットを主人公とするシリーズの第15作。ジョーはいつものように、悪辣な犯罪者や政府機構の歪みと闘わなくてはならないのですが、はるかに巨大な大自然の神々しさを感じさせてくれるシリ…

ディレイ・エフェクト(宮内悠介)

表題作の中編と2本の短編からなる1冊ですが、3作品の間にあまり共通点はありません。強いて言えば東京の下町の雑然とした雰囲気が共通項でしょうか。それほどSFっぽくない作品です、 「ディレイ・エフェクト」 2020年の東京に、突然1944年の戦…

ファミリー・レス(奥田亜希子)

タイトルの「ファミリー・レス」とは「欠けた家族」とでもいう意味でしょうか。それぞれわずかな繋がりのある人物たちを通じて語られる6篇の連作短編に登場するのは、どれも完璧ではない家族のある方。しかし誰もが家族が欠けた状態にあることに満足しては…

猫と罰(宇津木健太郎)

2024年の日本ファンタジーノベル大賞を受賞した「猫ファンタジー」です。語り手は、かつて文豪に飼われていた名前のない黒猫。猫には9つの命があるといいますが、9度目の生を受けて現代に生まれ変わったのです。過去世の悲惨な記憶から孤独に生きる道…

私たちのテラスで、終わりを迎えようとする世界に乾杯(チョン・セラン)

著者の作品を読むのは9冊め。日本で一番翻訳されている韓国作家かもしれません。本書は2016年から2022年にかけて、さまざまな媒体から依頼された掌編小説を1冊に編んだ作品集。22作もあるので、特に印象に残った作品についてメモを記しておきま…

月魚(三浦しをん)

著者初期の中編と短編2本からなる本書は、後の『まほろ駅前多田便利軒』シリーズの原型とも思える、2人の青年のバディ物語。こちらの方が硬い文体である分、透明感を醸し出していますが、好みは人それぞれでしょう。 主人公は、古書店「無窮堂」の若き当主…

冬と瓦礫(砂原浩太朗)

今や歴史・時代小説の名手である著者は、1995年の阪神・淡路大震災の時には26歳。神戸出身ながら早稲田大学卒業後、出版社に勤務していた頃のことで、直接体験してはいません。幸い親族で亡くなった人もなく、実家も残ったとのことですが、震災直後の…

マルドゥック・アノニマス 10(冲方丁)

マルドゥック・シティを影で牛耳っている「シザーズ」が、いよいよ本気を出して邪魔者を消しにかかってきたようです。合法的な正義を守ろうとしている「イースターズ・オフィス」と協力者たちのみならず、シザーズの支配を脱して独自の勢力「評議会」を率い…

時は乱れて(フィリップ・K・ディック)

1955年にデビューした著者が1958年に著した初期長編です。日本では1978年のサンリオ文庫創刊ラインアップの一冊として出版されましたが、その後は多数の名作の影に隠れて見過ごされ続け、2014年に再販されました。 主人公のレイクル・ガムは…

オスマン帝国全史2(宮下遼)

著者が本書執筆の依頼を引き受けた契機は、2020年7月に起きたアヤ・ソフィア博物館のモスクへの復活だったそうです。それは新オスマン主義の復活なのか。イスラム復興の現われなのか、単なる政治的パフォーマンスなのか。まだ答えは出ていませんが、著…

オスマン帝国全史1(宮下遼)

ノーベル賞作家オルハン・パムクの『わたしの名は赤』の翻訳などを手掛けたトルコ文学者である著者が、600年に渡るオスマン帝国の歴史を通観します。現代も混乱が続いている、バルカン、ウクライナ、シリア、パレスチナ、イラクといった広大な地域を、オ…

新八犬伝 結(石山透)

ついに「仁」の珠を持つ最後の犬士が登場。「怨」の珠を掴まされて抜け殻のようになってしまった犬阪毛野を救うために丹後を訪れた犬飼現八は、犬崎新なる人物の名前を聞くのですが、これはイミテーションですね。本物の名前は犬江親兵衛であり、犬塚信乃と…

新八犬伝 転(石山透)

船路で安房に向かっていた犬塚信乃は、玉梓怨霊が起こした大暴風雨で、海賊が根城とする鬼ヶ城へと流れ着きました。そこで明国から海賊にさらわれてきた娘・リョンピンを救い出し、故郷へと送った帰りに琉球にたどり着き、前王の正嫡である樽金王子の王国再…

新八犬伝 承(石山透)

第2巻は、「悌」の珠を持つ第5の犬士・犬田小文吾の登場から始まります。芳流閣の決闘で利根川に落ちた犬塚信乃と犬飼現八を助けた行徳の旅籠屋の息子ですが、わけあって家を出奔。武蔵国で出会った毒女・船虫の謀略で千葉家家老の馬加大記に幽閉されます…

新八犬伝 起(石山透)

「新八犬伝」とは1973年から2年間に渡ってNHKで放送された人形劇であり、本書はそのノベライズです。原作はもちろん曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』なのですが、1年間の予定が2年間に延長されたことでm『椿説弓張月』、『復讐月氷奇縁』、『雲妙間…