りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2025-04-01から1ヶ月間の記事一覧

2025/4 Best 3

1.眠れない夜に思う、憧れの女たち(ミア・カンキマキ) フィンランドに清少納言ブームを起こした『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』の著者の第2作は、著者が「眠れない夜に思いを馳せる」歴史上の女性たちの軌跡を訪ねる長編エッセイでした。…

相続始末記(堀川アサコ)

「幻想シリーズ」などの生死のあわいを描くファンタジーを主戦場とする著者ですが、本書は現実世界の物語。ただしテーマは亡くなった父親の財産相続ですので、死者と向き合うという点では近い領域なのかもしれまっせん。 函館で暮らす25歳の会社員フクミは…

冬晴れの花嫁(今村翔吾)

過去を捨てさって新たな人生を求める者たちの逃亡を助ける「くらまし屋」シリーズの第5弾の依頼人は、なんと老中松平武元。もっとも彼が求めるのは幕閣からの逃亡ではなく、空白の一日だけ。彼にはいったいどのような事情があったのでしょう。しかし情報を…

ガイズ&ドールズ(デイモン・ラニアン)

1930年代のニューヨークを舞台とする短篇集。もっとも本書で描かれるのはブロードウェイという狭い空間でしかなく、登場するのはほとんどギャンブラー、ギャング、ショーガール、新聞記者、警官だけ。全部の物語で語り手として登場している著者自身が、…

ほんのささやかなこと(クレア・キーガン)

今もケルト文化が息づく現代アイルランドの田舎を舞台にした短編集『青い野を歩く』で、2009年に鮮烈な日本デビューを果たした著者による中編です。本書は、アイルランドに1996年まで実在した教会運営の母子収容施設と「マグダレン洗濯所」をモデル…

スイマーズ(ジュリー・オオツカ)

全米図書賞の最終候補作となった『屋根裏の仏さま』は、日米開戦後に強制収容された日系移民の物語を写真花嫁たちの視点から描いた秀作でした。本書の舞台は現代であり、1962年生まれの著者自身も登場するのですが、過去の歴史に触れずにはいられません。…

この世界からは出ていくけれど(キム・チョヨプ)

1993年生まれの若い著者は、2021年のTV番組「世界SF会議」でユニークなコメントを連発したのをきっかけに日本での人気は急上昇。本書は『わたしたちが光の速さで進めないなら』に続く第2短編集であり、その前に長編『地球の果ての温室で』も翻…

ビブリオフォリア・ラプソディ(高野史緒)

「ダブルクリップ」と題されたプロローグとエピローグに挟まれた5篇の物語は、本を愛することや作品を書くことを主題とする短篇集です。しかし歴史幻想小説『ムジカ・マキーナ』でデビューし、ドストエフスキー作品を改変した『カラマーゾフの妹』でブレイ…

ちゃんばら(佐藤賢一)

近世ヨーロッパを題材とする小説で第一人者である著者が、まさかの宮本武蔵。たしかにこれまで『女信長』、『新徴組』、『日蓮』などの作品もあるのですが、ここまでストレートな文豪小説を書くとは思ってもいなかったのです。まさか「二刀流」の大谷翔平選…

眠れない夜に思う、憧れの女たち 第3部 芸術家たち(ミア・カンキマキ)

40代、独身、子なしの著者が、眠れない夜に思いを馳せる女性たちの足跡をたどった本書の「第3部」の舞台はフィレンツェでした。しかし無数の美しい女性たちが描かれたルネサンスの都で、女性の選択肢は「妻、修道女、娼婦」以外にあったのでしょうか。そ…

眠れない夜に思う、憧れの女たち 第2部 探検家たち(ミア・カンキマキ)

「第1部アフリカ」に続く「第2部 探検家たち」には、3人の女性が登場します。 ひとりめは日本でも有名なイザベラ・バード。1831年にイングランドで生まれたイザベラは、両親を亡くした後に「健康回復」を目的として世界旅行を思い立ちます。その時4…

眠れない夜に思う、憧れの女たち 第1部 アフリカ(ミア・カンキマキ)

フィンランドに清少納言ブームを起こした『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』の著者の第2作は、著者が「眠れない夜に思いを馳せる」歴史上の女性たちの軌跡を訪ねる長編エッセイでした。1巻本ですが3部構成であり、登場人物も多いので、3回に…

安倍晴明くれない秘抄(六道慧)

昨年の大河ドラマが紫式部の物語だったこともあり、平安王朝時代に題材を求めた作品を手に取る機会も増えたように思えます。2024年4月に書き下ろされた本書も、そんな1冊。安倍晴明がタイトルとなっていますが、本書の影の主役は中宮定子です。 貧民街…

パタゴニア(ブルース・チャトウィン)

しました。自らの旅の記録のみならず、パタゴニアに関する地誌、歴史、人物、エピソードなどを発想の赴くままに詰め込んだ本書は、20世紀後半の旅行記の古典と評価されています。ただし、今の言葉で言うと「かなり盛ってる」感は否めません。 著者をパタゴ…

ピアノを尋ねて(クオ・チャンシェン)

台湾文学が注目されて久しいものの、これまでは台湾の現代史や政治状況に関わる作品が多かったように思えます。「聴覚小説」と呼ばれて大くの文学賞を受賞した本書は、音楽をテーマとする作品です。 語り手の「わたし」は、天賦の才能をもちながらピアニスト…

青姫(朝井まかて)

江戸時代初期、武士と悶着を起こして村を出奔した若者・杜宇が迷い込んだのは、不思議な村でした。そこは自由経済で成り立ち、誰の支配も受けなていない「青姫」の郷。籤で選ばれたという頭領の満姫は、「15歳の声を持ち、20歳の見目を誇り、知略は30…

ハルビン(キム・フン)

1909年にハルビン駅頭で、前の韓国統監であった伊藤博文を暗殺した安重根は、現代の言葉で言えばテロリストにすぎません。しかも強権的な韓国支配に反対していた伊藤博文の死によって、韓国併合が実現してしまうのですから、安重根の行為は歴史的に見て…

海を破る者(今村翔吾)

かつては源頼朝から「源、北条に次ぐ」と言われた伊予の名門・河野家は、承久の変で宮方に加担して所領の大半を没収され、さらに一族の内紛によって見る影もないほどに没落していました。そんな時に海の向こうから元が侵攻してくるとの知らせがもたらせます…

隠し女小春(辻原登)

さまざまな状況下での男女関係の機微を描いてきた著者の新作は、シュールな物語でした。なんとラブドールがラブドールが意志を持ち、人間を超える身体能力で自律行動するというのですから。小春と名付けられたラブドールは近未来的なAIではなく、古典的な…

まちづくりがわかる本(浦安まちブックをつくる会)

TDRで有名な浦安市は、埋立地の占める割合が大きいことでも知られています。人口の60%が、面積比では75%を占める埋立地に暮らしているのですから。そして新たに獲得された埋立地では、はじめから計画に基づいたまちづくりが試みられているのです。…

よくわかる一神教(佐藤賢一)

ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナの衝突、アメリカをはじめとする民主国家でのポピュリスト政治家の台頭など、世界各地が揺れ動いています。その遠因を探るために、西洋史を題材とする小説の第一人者である著者が、「一神教」の起源や地理、…