りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

#毎月のベスト本

2022/11 Best 3

1.走る赤(武甜静 ウー・テンジン編) 現在最前線で活躍している中国の女性SF作家14人の傑作短篇集です。VR世界を疾走する昏睡状態の少女。人類の科学発展を見守るネコ族。異種族コンビによるSF「西遊記」。架空言語研究者の母を持つ少年の「母語…

2022/10 Best 3

1.夏(アリ・スミス) イギリスのEU離脱を契機に書き始められた「四季シリーズ」が、本書で完結。既刊3冊『秋』、『冬』、『春』は独立して読める小説ですが、本書では人物の再登場があり、残されていた4作すべてに登場する100歳の老人ダニエルが夢…

2022/9 Best 3

1.愛の裏側は闇(ラフィク・シャミ) ダマスカス近郊の田舎村にルーツを持つ男女の悲恋物語。何十年もの間、村の支配権を巡って抗争を続けてきたカトリック教家の息子ファリードと、正教会教家の娘ラナーの純愛は、第二次大戦後のシリアがたどった歴史の中…

2022/8 Best 3

1.火の柱 上中下(ケン・フォレット) 12世紀の内乱時代に大聖堂を建築する『大聖堂』、14世紀の英仏百年戦争とペストの時代を背景とする『大聖堂-果てしなき世界』に続く第3シリーズは、16世紀のエリザベス1世時代の物語でした。イギリス人が最も…

2022/7 Best 3

1.喜べ、幸いなる魂よ(佐藤亜紀) フランス革命前夜の18世紀ベルギー。商家で双子の姉として生まれた聡明な女性ヤネケは、当時最先端の科学に惹かれます。生命の驚異を探求するために「実験」として子供を産むみ落とすほどに狂おしい情熱は、彼女を半聖…

2022/6 Best 3

1.レニーとマーゴで100歳(マリアンヌ・クローニン) 病院で終末医療を受けている17歳の少女レニーが、アートセラピーで83歳のマーゴと知り合います。ともに死と向き合っている年齢の離れた2人の女性は、自分たちが生きた証として、合わせて100…

2022/5 Best 3

1. プラヴィエクとそのほかの時代(オルガ・トカルチュク) ポーランドの辺境にある架空の村は宇宙の中心であり、四方を守護天使たちに護られているものの、激動の20世紀の世界情勢とは無縁でいられません。ロシア領から独立ポーランドへ、独ソ戦の最前…

2022/4 Best 3

1. 眠りの航路(呉明益)ウー・ミンイー 不思議な睡眠障害の治療のために日本を訪れる主人公は、著者の分身です。彼は生涯寡黙だった父親が語ることのなかった過去を追体験していくことになります。それは太平洋戦争末期に少年工として日本に渡った父親の…

2022/3 Best 3

1.緑の天幕(リュドミラ・ウリツカヤ) スターリンが亡くなった1953年に10歳だった著者が、同世代の男女を主人公として描いた大河小説です。幼馴染である3人の少年たちと、彼らの人生と交差する3人の少女たちの半生から浮かび上がってくるのは、「…

2022/2 Best 3

1.シブヤで目覚めて(アンナ・ツィマ) 日本留学の経験があるとはいえ、チェコの小説家が作り上げた大正期の作家「川下清丸」のリアリティは半端じゃありません。チェコで実在した人物であると誤解されたのは当然でしょう。私も信じてしまいそうになったほ…

2022/1 Best 3

1.遠巷説百物語(京極夏彦) 11年ぶりのシリーズ新作の舞台は遠野でした。『遠野物語』の現代語訳まで出した著者ですから、遠野独特の怪異を中心とする物語を期待していたのですが、竹原春泉による日本画集『絵本百物語』をベースとする方式は崩していま…

2021 My Best Books

2021年に読んだ本は287作品。まあまあ読んだ方ですが、諸事情あって11月以降の読書量は落ちているので、来年は減ってしまうかもしれません。超大作を一夜で読みきるようなことも減ってきているように思います。重要なのは量より質であることは論を…

2021/12 Best 3

1.FACTFULNESS(ハンス・ロスリング) 世界の貧困は改善されていないのか。人口は果てしなく増え続けるのか。今なお女性は迫害を受け続けているのか。このような問いに対する正解率は、チンパンジーがランダムに回答した場合より低い10%程度…

2021/11 Best 3

1.息吹(テッド・チャン) 第1短編集『あなたの人生の物語』以来17年ぶりの第2短編集というから、寡作にもほどがあります。しかし2年に1編という短編発表にもかかわらず、彼の作品は多くのSF賞を受賞し、映画化されてヒットし、オバマ前大統領から…

2021/10 Best 3

1. 戦争は女の顔をしていない(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ) 著者は2015年のノーベル文学賞を受賞した著者の代表作ですが、本書をめぐっては「文学論議」が起こりました。自らをジャーナリストであるとする著者の地の文はほんのわずかであり…

2021/9 Best 3

1.ブルシット・ジョブ(デヴィッド・グレーバー) 「ブルシット・ジョブ」とは著者の造語のようで、役立たないにもかかわらずそれを自覚して従事する仕事について名付けたもの。広報、ロビイスト、顧問弁護士、コンプライアンス担当者、中間管理職などの、…

2021/8 Best 3

1.理不尽ゲーム(サーシャ・フィリペンコ) 30年近くも独裁政権を敷き続けている大統領のもとで「ヨーロッパ最後の独裁国家」として非難されるベラルーシという国について、私たちは何を知っているでしょうか。「昏睡状態に陥って目を覚ます気配がない祖…

2021/7 Best 3

1.日本文学全集4・5・6 源氏物語 上中下(池澤夏樹編/角田光代訳) 角田さんは『源氏物語』の現代語訳に際して、まず読みやすさを優先したとのことです。原典で大幅に省略されている人称代名詞を丁寧に書き込み、「作者の声」を本文とは異なる語調で記…

2021/6 Best 3

1.大統領の秘密の娘(バーバラ・チェイス=リボウ) アメリカ独立宣言の起草者としても有名な第3代アメリカ合衆国大統領トマス・ジェファソンには、黒人奴隷の愛人に産ませた混血の子供たちがいたといいます。大統領選挙中にスキャンダルとして攻撃された…

2021/5 Best 3

1.出島の千の秋(デイヴィッド・ミッチェル) 『クラウド・アトラス』の著者による「日本の出島を舞台とする群像劇」というと少々意外な気もしますが、著者は大学卒業後に日本語教師として8年間広島に滞在していたとのこと。陰謀と詐欺が横行する出島に赴…

2021/4 Best 3

1.アウグストゥス(ジョン・ウィリアムズ) 養父カエサルを継いで地中海世界を統一し、ローマ帝国初代皇帝となったオクタウィウスに贈られた尊称がアウグストゥス。偉大な名前と若い友人たちしか持っていなかった18歳の青年はどのようにして、カエサルの…

2021/3 Best 3

1.ライフ・アフター・ライフ(ケイト・アトキンソン) 事故や病気、犯罪や戦争の犠牲者となるたびに何度も生まれ変わって人生をやり直す女性は、不慮の死を避けて生き延びることを覚えていきます。しかし人生の目的とは、長く生きるだけなのでしょうか。よ…

2021/2 Best 3

現代は、ポピュリズムによって生み出され、ネットによって増幅される新たな分断の時代なのでしょうか。新型コロナという全人類にとっての災厄ですら、分断を広げる方向に働いているように思えます。そんな時には、過去に何度もあった分断の時代の中で、静か…

2021/1 Best 3

巨匠ル・カレさんの2作品、現役感バリバリでブリグジットを扱った『スパイはいまも謀略の地に』と、創作の秘密を垣間見せてくれた自伝的小説『地下道の鳩』は、どちらも素晴らしい作品でした。今月は良い作品にたくさん出会えたのですが、どれもめちゃくち…

2020 My Best Books

2020年に読んだ本は268作品。コロナ禍で家に籠っていた時間も長かったのですが、2度の引っ越しがあった前年よりも減ってしまいました。むしろ実生活が多忙なほうが読書にも気合が入るのかもしれません。今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」…

2020/12 Best 3

1.銀河鉄道の父(門井慶喜) 国民的詩人とも評される宮沢賢治の父親には「賢治の進学や創作に反対した人物」という印象を持っていました。しかし徹底した調査に基づいて父親目線で描かれた本書は、そんな人物像を鮮やかに覆してくれました。彼は浮世離れし…

2020/11 Best 3

1.あの本は読まれているか(ラーラ・プレスコット) 冷戦時代にCIAが、ソ連では出版禁止となっていた『ドクトル・ジバゴ』をソ連国内に流布させようとするプロパガンダ作戦を行っていたとは驚きました。公表された僅かな事実を膨らまして描かれた本書で…

2020/10 Best 3

現代中国の小村、戦後のスペイン・バスク地方、19世紀の英国、平安時代の日本と、異なる時代の異なる国々を描いた作品が上位に並びました。どれも社会問題に鋭く切り込みつつ、ストーリー展開も楽しめる作品です。小説世界ではベルリンにも、スウェーデン…

2020/9 Best 3

今更ながら堀田善衞さんの作品を読みふけっています。これまで大著『ゴヤ』と『ミシェル城館の人』しか読んでいなかったのですが、『路上の人』を読んで彼の著作が持つ熱量を理解できたせいかもしれません。今月1位とした『若き日の詩人たちの肖像』の熱量…

2020/8 Best 3

堀田善衞氏の著作は、かなり前に『ゴヤ4部作』を読み、数年前に『ミシェル 城館の人』を読んだにとどまっていましたが、『路上の人』は感動的でした。国家や教会という権力に向って、身ひとつだけで対峙する人物の覚悟が、ひしひしと伝わってきたのです。今…