りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

#毎月のベスト本

2024/3 Best 3

1.チンギス紀 17(北方謙三) 著者渾身のライフワークである「大水滸シリーズ」がついに完結。「水滸伝19巻」、「楊令伝15巻」、「岳飛伝17巻」に続く「チンギス紀17巻」ですから、全部で68巻。気の遠くなるようなページ数です。著者は直木賞…

2024/2 Best 3

1.真の人間になる 上下(甘耀明 カン・ヤオミン) 戦中戦後の台湾の混乱期をマジック・リアリズム的な手法で描いた『鬼殺し』に対して、本書はより抒情的な作品です。漢民族からは原住民として異類視され、日本人からは被支配者として迫害され、米国人から…

2024/1 Best 3

1.フリアとシナリオライター(マリオ・バルガス=リョサ) ラテンアメリカを代表するノーベル文学賞受賞作家が1977年に発表した本書は、半自伝的な青春小説であるとともに、スラップスティック濃度の濃いコメディタッチの作品です。まだ大学生の身であ…

2023 My Best Books

2023年に読んだ本は288作品。平均よりも少し多かったかな。じっくり腰を据えて読むべき重厚な作品から、軽妙な作品まで、幅広く読んだ印象です。ともあれ、今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」を選んでみましょう。 ・長編小説部門(海外):…

2023/12 Best 3

1.鏡と光 上下(ヒラリー・マンテル) ヘンリー8世の寵臣として、イングランドの宗教改革や絶対王政の確立に大きく貢献したトマス・クロムウェルの生涯について、正面から向き合った3部作の最終巻。アン・ブーリンの登場とトマス・モアの処刑までを描い…

2023/11 Best 3

1.アーダの空間(シャロン・ドデュア・オトゥ) 15世紀のアフリカ西海岸の村で幼児を失って悲嘆に暮れる母。19世紀のロンドンでディケンズと逢瀬を重ねる伯爵夫人。1945年のポーランドで強制収容所の慰安婦となった女性。そして現代のベルリンで差…

2023/10 Best 3

1.ひとりの双子(ブリット・ベネット) アメリカで先祖に黒人を持つ者は、白人のような見かけであっても「黒人」と見なされてしまいます。そんな者たちが白人になりすます「パッシング」を題材とした作品です。矛盾に満ちた混血者たちの町から逃亡した後、…

2023/9 Best 3

1.黄金虫変奏曲(リチャード・パワーズ) バッハの「ゴルドベルク変奏曲」とポーの『黄金虫』を合成したタイトルを持つ本書は、分子遺伝学、進化論、情報科学、音楽、文学、歴史、絵画などの知識を縦横無尽に駆使して創作された野心的な作品です。1950…

2023/8 Best 3

1.ボーン・クロックス(デイヴィッド・ミッチェル) 1984年夏、ごく普通の娘にすぎないホリーは、母との喧嘩で家出したある日、謎めいた老婆と出会って不思議な約束を交わします。その後、1991年には学生ラムが、2004年にはジャーナリストのエ…

2023/7 Best 3

1.サピエンス全史 上下(ユヴァル・ノア・ハラリ) 他の動物や人類の中でのサピエンスの優位を確立した「認知革命」と、人口と富を増大させてグローバル化への道筋をつけた「農業革命」と、さらに爆発的な変化をもたらした「科学革命」は、人類を幸福に導…

2023/6 Best 3

1.女たちのニューヨーク(エリザベス・ギルバート) 1940年の初夏、老朽化した劇場を経営している叔母を頼ってニューヨークにやってきた19歳のヴィヴィアンは、たちまち粋で艶やかなショービジネスの世界の虜となってしまいますが、大女優の逆鱗に触…

2023/5 Best 3

1.地図と拳(小川哲) 満洲の架空の都市の半世紀にわたる興亡を通して、戦争に至る構造を描いた大作です。「地図」は理念を、「拳」は暴力を象徴しているのでしょう。類稀なる先見の明を有する主人公は、日中戦争・太平洋戦争を回避する道を探り続けたもの…

2023/4 Best 3

1.反乱者(ジーナ・アポストル) フィリピン人の作家兼翻訳者マグサリンが、アメリカ人の映画監督キアラから通訳を依頼されるところから始まる物語は、米比戦争をテーマとした重層的なメタフィクションでした。中心に据えられているのは、19世紀末の米西…

2023/2 Best 3

1.獄中シェイクスピア劇団(マーガレット・アトウッド) 世界のベストセラー作家がシェイクスピアの名作を語りなおすシリーズの第1弾が、『テンペスト』の現代版である本書です。精霊エアリアルや怪物キャリバーンを従えて孤島で復讐心を燃やすプロスぺロ…

2023/1 Best 3

1.三体3 死神永生 上下(劉慈欣 リウ・ツーシン) 「三体シリーズ3部作」の最終巻は、宇宙の熱的死と再生への希望までを描く壮大な物語でした。小説的には読者を暗中模索状態に誘い込む第1部が優れているのですが、著者が本当に書きたかったのは本書で…

2022 My Best Books

2022年に読んだ本は266作品。後半追い上げたのですが、前半に読書量が落ちていたこともあって、前年よりも21冊も減ってしまいました。今年の特徴は、海外の軽妙で良質な作品が多かったことでしょうか。昨年後半から手に取ることが多くなった韓国フ…

2022/12 Best 3

1.三体(劉慈欣 リウ・ツーシン) 近年躍進著しい中国SFは「三体以前」と「三体以後」に分かれると言われるほどに、画期的な作品です。予測不能な三重太陽の動きに翻弄される惑星に文明が生まれたとしたら、どのようなものになるのでしょう。そして文化…

2022/11 Best 3

1.走る赤(武甜静 ウー・テンジン編) 現在最前線で活躍している中国の女性SF作家14人の傑作短篇集です。VR世界を疾走する昏睡状態の少女。人類の科学発展を見守るネコ族。異種族コンビによるSF「西遊記」。架空言語研究者の母を持つ少年の「母語…

2022/10 Best 3

1.夏(アリ・スミス) イギリスのEU離脱を契機に書き始められた「四季シリーズ」が、本書で完結。既刊3冊『秋』、『冬』、『春』は独立して読める小説ですが、本書では人物の再登場があり、残されていた4作すべてに登場する100歳の老人ダニエルが夢…

2022/9 Best 3

1.愛の裏側は闇(ラフィク・シャミ) ダマスカス近郊の田舎村にルーツを持つ男女の悲恋物語。何十年もの間、村の支配権を巡って抗争を続けてきたカトリック教家の息子ファリードと、正教会教家の娘ラナーの純愛は、第二次大戦後のシリアがたどった歴史の中…

2022/8 Best 3

1.火の柱 上中下(ケン・フォレット) 12世紀の内乱時代に大聖堂を建築する『大聖堂』、14世紀の英仏百年戦争とペストの時代を背景とする『大聖堂-果てしなき世界』に続く第3シリーズは、16世紀のエリザベス1世時代の物語でした。イギリス人が最も…

2022/7 Best 3

1.喜べ、幸いなる魂よ(佐藤亜紀) フランス革命前夜の18世紀ベルギー。商家で双子の姉として生まれた聡明な女性ヤネケは、当時最先端の科学に惹かれます。生命の驚異を探求するために「実験」として子供を産むみ落とすほどに狂おしい情熱は、彼女を半聖…

2022/6 Best 3

1.レニーとマーゴで100歳(マリアンヌ・クローニン) 病院で終末医療を受けている17歳の少女レニーが、アートセラピーで83歳のマーゴと知り合います。ともに死と向き合っている年齢の離れた2人の女性は、自分たちが生きた証として、合わせて100…

2022/5 Best 3

1. プラヴィエクとそのほかの時代(オルガ・トカルチュク) ポーランドの辺境にある架空の村は宇宙の中心であり、四方を守護天使たちに護られているものの、激動の20世紀の世界情勢とは無縁でいられません。ロシア領から独立ポーランドへ、独ソ戦の最前…

2022/4 Best 3

1. 眠りの航路(呉明益)ウー・ミンイー 不思議な睡眠障害の治療のために日本を訪れる主人公は、著者の分身です。彼は生涯寡黙だった父親が語ることのなかった過去を追体験していくことになります。それは太平洋戦争末期に少年工として日本に渡った父親の…

2022/3 Best 3

1.緑の天幕(リュドミラ・ウリツカヤ) スターリンが亡くなった1953年に10歳だった著者が、同世代の男女を主人公として描いた大河小説です。幼馴染である3人の少年たちと、彼らの人生と交差する3人の少女たちの半生から浮かび上がってくるのは、「…

2022/2 Best 3

1.シブヤで目覚めて(アンナ・ツィマ) 日本留学の経験があるとはいえ、チェコの小説家が作り上げた大正期の作家「川下清丸」のリアリティは半端じゃありません。チェコで実在した人物であると誤解されたのは当然でしょう。私も信じてしまいそうになったほ…

2022/1 Best 3

1.遠巷説百物語(京極夏彦) 11年ぶりのシリーズ新作の舞台は遠野でした。『遠野物語』の現代語訳まで出した著者ですから、遠野独特の怪異を中心とする物語を期待していたのですが、竹原春泉による日本画集『絵本百物語』をベースとする方式は崩していま…

2021 My Best Books

2021年に読んだ本は287作品。まあまあ読んだ方ですが、諸事情あって11月以降の読書量は落ちているので、来年は減ってしまうかもしれません。超大作を一夜で読みきるようなことも減ってきているように思います。重要なのは量より質であることは論を…

2021/12 Best 3

1.FACTFULNESS(ハンス・ロスリング) 世界の貧困は改善されていないのか。人口は果てしなく増え続けるのか。今なお女性は迫害を受け続けているのか。このような問いに対する正解率は、チンパンジーがランダムに回答した場合より低い10%程度…