りぼんの読書ノート

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鳥と雲と薬草袋(梨木香歩)

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家守綺譚海うそなど、「人と土地の結びつき」を描いてきた著者による「地名エッセイ」です。

タイトルの「鳥と雲」は理解できますが、「薬草袋」が謎ですね。著者は本書を「旅に持ち歩く薬草袋のなかの、いい匂いのハーブのブーケや、愛着のある思い出のメモの切れ端のような」存在と言っています。なるほど。

土地の来歴や地名への想いを綴った、「掌編」より短い「葉編」は、全部で49。「まなざしからついた地名、文字に倚り掛からない地名、消えた地名、正月らしい地名、新しく生まれた地名、温かな地名、峠についた名まえ、岬についた名まえ、谷戸と迫と熊、晴々とする「バル」、いくつもの峠を越えて行く、島のもつ名まえ」に分類されています。

「岬」というの言葉に含まれる「サキ」は突端のことであり、その先はないということ。「『ここまで』と限界を知らされることは、人にとっての救いではないか」というフレーズが印象に残りました。

それにしても、全国で地名を虐殺した「平成の大合併」の罪の重さに愕然としてしまいます。いや、悪いのが「大合併」ではなく、その際に旧地名を抹殺したお役所仕事と住民エゴだと思うのですが。

2015/10