りぼんの読書ノート

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濱次お役者双六 五ます目 長屋狂言(田牧大和)

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江戸の文政期を舞台にして大部屋女形・濱次の成長を描くシリーズの第5作。前作の半可心中では「ます目」が消えていたので不思議に思いましたが、今回は順番通りの「五ます目」です。まだ「上がり」というわけではありませんでした。

「代役」で好演を博した後、なぜか濱次には役がつかなくなってしまいました。「大化け」できるだけの才能を持ちながら覚悟ができていない濱次は、中途半端には使いにくくなっていたのですが、本人はそんなことに気づいてもいません。

そんな折、長屋仲間で堅物の浪人・仁野に、亡き妻の妹・絹が岡惚れしてしまったという騒動が起こります。弱り切った仁野の頼みで、絹が諦めるように一芝居打つことにする濱次。実生活上のトラブル解決は、霊によって「人情修行の場」になるのでしょうか。そして濱次は覚悟を決めて、居心地の良かった大部屋を抜け出すことになるのでしょうか。濱次は、花形女形が後継者として選んだライバルと、因縁の対決に臨むのですが・・。

いつの間にか、早逝した先代・有島香風の霊の出番が減っているようです。「名代」には届かないものの「名代手伝(?)」となった濱次には、やはり「上がり」も近いのかもしれません。

2015/10