りぼんの読書ノート

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謎の毒親(姫野カオルコ)

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著者が実際の体験をもとにして著した「相談小説」です。小学校の近くにあった書店に立ち寄った際、そこが近所の児童からの相談コーナーを開設していたことを思い出した著者が、子ども時代に謎だった不思議な親の言動について相談を試みるという物語。歳を重ねたものの健在な、書店の経営者夫婦が、あれこれ推理して丁寧に回答してくれるのです。

著者の両親は、相当な毒親だったようです。「恐怖の虫館」も、「タクシー帰宅疑惑」も、「オムニバス映画叱責事件」も、「死人の臭い事件」も、「ガラス玉演戯事件」も、核になっている物語は、全部実話だというのですから。しかも、まだまだたくさんネタがあるとのこと。

そこから浮かび上がってくるのは、子供に関心を持てずに自分の気分だけで理不尽な叱責をする「怖い父親」と、子供に愛情を持てないまま夫に抑圧された鬱屈を直接ぶつけてくる「不気味な母親」なのです。しかし、ここまで解釈できたのは、「相談」の持つ力。毒親の謎の言動に接した子供としては、ただ単に怯えるだけだったでしょうから。

つまり本書は、「相談」を通じて、謎だったことの理由を推理・解釈することによって、今は亡き両親をあらためて理解するためのプロセスだったのです。そしてそれは、大人になった著者にとっては「毒親」の後遺症を「解毒」することでもあったのでしょう。それにしても、こんな両親を持った子供は辛いですね。

2016/11