りぼんの読書ノート

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スペース(加納朋子)

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デビュー作ななつのこと続編魔法飛行の後、10年以上の間を置いて書かれた「駒子シリーズ第3作」は、「起承転結」の「転」にあたるようです。「結」にあたる第4作まで執筆される計画であることを、著者が明かしています。

晦日のデパートで偶然に出会った瀬尾さんに、10数通の手紙を渡して謎解きを迫った駒子の思いはどこにあったのでしょう。それはラストで明らかになり、2人の関係に「転機」を促すのですが、まずは手紙をめぐる「マジック」を楽しむべき作品ですね。

手紙に登場する「駒ちゃん」のキャラや家庭環境が、駒子と微妙に異なるのは何故なのか。自分に似た女性がしばしば現われるという不思議な事実は何を意味するのか。何より、手紙に書かれなかった「ある物語」とは何なのか。

当然ながら瀬尾さんの推理は鋭いのですが、私には、駒子がこんな大胆なことに関わることのほうが驚きでした。その間の事情は「種明かし編」ともいうべき「バックスペース」で明らかになります。そして、それは同時に、自分の居場所(スペース)を探す1人の女性の成長物語になっているんですね。

「駒子シリーズ」の完結編も是非読みたいものです。著者の本復をお祈りいたします。

2014/9