りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ななつのこ(加納朋子)

イメージ 1

「一体、いつから疑問に思うことをやめてしまったのでしょうか? いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なことすべてに納得してしまうようになってしまったのでしょうか? いつだって、どこだって、謎はすぐ近くにあったのです」。

19歳の入江駒子が、とても気に入った本の著者・佐伯綾乃にファンレターを書くところから物語が始まります。作中作「ななつのこ」は、主人公のはやて少年が、ふとしたきっかけで出会ったあやめお姉さんのヒントをもとに、日常生活の中のちょっとした謎を解決して納得していく、ミステリというより少年の成長物語。

駒子も、長いファンレターに日常の謎を書き綴り、綾乃からの返事をヒントにして謎を解いていくことになるのでした。それらの謎は「スイカジュースのような血痕」や、「すり替えられた絵画」や、「失われた一枚の写真」や、「おばあちゃんの探し物」や、「移動したビニール恐竜」や、「白いたんぽぽの花」や、「プラネタリウムで消えた少女」。そのひとつひとつが、作中作「ななつのこ」の物語とペアになっているのです。

最後の謎は、佐伯綾乃の意外な正体でした。そして、駒子の作家デビューという驚くべきエピローグへと物語は続いていきます。作者が読書をこよなく愛していて、いい友人たちに恵まれているんだろうなと思わせてくれる小説です。

ところで加納さんは、読者の方々から手紙で相談を受けることが多いとのことです。そして、さまざまな悩みや不満に対して、明快で自信に満ちた答えを出せないことを辛く感じているようなのです。「ミステリには答えがありますが、現実はそんなに単純でも生やさしくもなく、私はあやめさんにも綾乃さんにもなれそうもない」と、どこかで書いていらしゃいました。

現在、白血病に罹って闘病中という加納さんの、一日も早い本復を、お祈りいたします。

2014/6