りぼんの読書ノート

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コッペリア(加納朋子)

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スワニルダという婚約者がいながら、人形に恋してしまった青年フランツを主人公とするバレエ「コッペリア」に対するオマージュ的な作品です。

まゆらという人形作家が作る精巧な人形に惹かれた青年が出会ったのは、その人形にそっくりの女性でした。パトロンに養われながら小さな劇団で女優をしているその女性は、なぜ人形と同じ顔をしているのか。青年と女優の視点が交互に入れ替わりながら進んでいく物語は、著者の作品としては珍しく、幻想小説のような雰囲気を纏っています。

なぜ女優と同じ顔の人形が存在しているのか。なぜ人形作家は死んでしまったのか。そして2人に敵意を持つ人物とは誰なのか。謎めいた部分は典型的な倒叙ミステリであり、2つの時系列と2人の人物が1つであるように錯覚させるものなのですが、そこがポイントではないのでしょう。

コッペリア」の主人公たちが最期には普通の男女関係に戻るように、本書も未来の明るい展開を予感させる雰囲気で終わります。憑き物が落ちて、本来の加納朋子さんの世界に戻ったかのようなエピローグでした。

2018/6