りぼんの読書ノート

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ささらさや(加納朋子)

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夫を突然の交通事故で亡くしたサヤは、まだ首も据わらない赤ちゃんのユウ坊を抱えて、大好きだった伯母が残してくれた佐々良という田舎町の家に引っ越してきました。義父の跡継ぎとして、赤ちゃんを引き取ろうとする夫の遺族から距離を取りたかったのです。

乳飲み子を抱えて、身寄りもなく、新しい環境に身を置いたサヤに、さまざまな事件が降りかかってきます。でも、彼女にはこっそりと見守ってくれる存在がいたのです。それは亡くなった夫のゴースト。普段は見守るしかできない存在ですが、ごく稀にいる「体質を持った人」には短時間乗り移ることができるのです。でも、ひとりにつき一回だけ。

誰も知らないお婆さんの謎、旅館に出るいたずらっ子の幽霊、空っぽの小包の中身、被害者のいない誘拐事件、孤独なお婆さんの待ち人・・。加納さんらしい「日常のミステリ」を織り込みながら、頼りなくて泣き虫のサヤが少しずつ力強くなっていく様子が描かれます。そしてクライマックスは、強引にユウ坊を連れ去ろうとする夫の遺族たちとの対決。

「いざ」という時の夫の助けもあって、近所に住む三人のお婆さん(久代、夏、珠子)や、個性的なシングルマザー(エリカ)という友だちもできました。でも、サラが独り立ちできるようになるということは、ゴーストになって現世に留まっている夫と永遠に別れる日が来るということだったのです。「トワイライトささらさや」として映画化されました。主演は新垣結衣さん。加納版「ゴースト」ですね。

2015/1