りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

明治・妖モダン(畠中恵)

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「妖たちが、そう簡単にいなくなると思うかい?」江戸が終わって20年。煉瓦街が広がり、アーク灯が闇を照らす明治の世といっても、江戸とは地続きにすぎません。銀座4丁目交差点にたたずむ派出所勤務の原田と滝が調査する「妖(あやかし)」の物語は、『しゃばけシリーズ』とは異なって、どこかダークです。

「煉瓦街の雨」
牛鍋屋店主・百賢の妹みなもに惚れた金回りのいい中年男の正体は、やはり犯罪者。強引にプレゼントした翡翠のブローチが犯罪の証拠となることを恐れた男は、みなもを騙して連れ出して・・。悪漢たちに復讐したの「かまいたち」と「濡れ女」の正体は? どうやら巡査たちに化けた妖がいるようです。

「赤手の拾い子」
煙草商の赤手が拾ってきた迷子の幼女が、たちまちのうちに成長していきます。あこぎな金貸しが親として名乗り出たのは、少女が持っていたダイヤのせいではありませんでした。少女の意外な正体と、金貸しの意外な純情が交差する作品。

「妖新聞」
妖たちが犯罪を起こしていると書き立てる新聞記者の狙いは何なのでしょう。互いに関連のない5人が殺害された事件の真相は何だったのでしょうか。身重の新妻を人質に取られた原田巡査が、賊におびき寄せられて襲われるのですが・・。巡査と妖たちの関係が、ひとつ明らかにされます。

「覚り 覚られ」
明治22年の第1回帝国議会選挙には、壮士やらなんやら、わけのわからない人物も多く立候補したようです。選挙に妖怪を利用しようとして、「サトリ」を探し求める男が登場しますが、そんな試みがうまくいくはずがありません。それにしても、三味線の師匠のお高は、察しが良すぎるようです。

「花乃が死ぬまで」
昔、恋人と引き離されて親の都合で繰り返し結婚させられた娘も、今では中年すぎの資産家になっています。遺産目当てで襲われたところを助けてくれた巡査の滝は、昔の恋人にそっくりでしたが、年齢が20歳ほど若すぎました。

結局、原田も滝も妖だったのです。ひょっとして、明治の時代を生き続けている「佐助(犬神)と仁吉(白択)」だったりして。さらに常連メンバーの百賢、赤手、お高らも妖しいですね。他のシリーズと比較するとダークな雰囲気の作品ですが、これもシリーズ化するのでしょうか。

2015/1