学園に伝わる不吉な伝説から「死神」呼ばわりされている一弥が、あろうことか殺人事件の犯人にされてしまいます。一方で本編では素直な溌剌美少女のアブリルは、本書では謎多き美女で、ヴィクトリカとも最悪の出会い方。いや、時系列的に本書から少し後の物語である『GOSICK』では、アブリルはヴィクトリカと会ったことがなかったのでは?
個々の事件の謎ときには、道に張ったピアノ線や、切手に替えた財産など、ミステリ的に新味のない手口が使われていますが、一見短編集である本書は一冊全体で、大泥棒のクィアランの謎に挑むひとつのミステリだったのですね。本編が、シリーズ全体でヴィクトリカの出生の謎を解く物語であるのと同様に。
「はじまりの物語」ではあるのですが、登場人物たちがお馴染みの存在になった『GOSICK 4』の後くらいに読むとちょうど良いと思います。たしか出版順もそうでした。
2017/3