りぼんの読書ノート

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クロコダイル路地 1(皆川博子)

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第1巻と第2巻を一気読みしたかったのですが、図書館に頼っているとなかなかそうもいきません。第2巻がまわってくるのは来月以降になりそうです。

フランス革命期を舞台にした、伝奇ロマンの第一部の舞台はロワール川の河口に栄えた貿易都市ナント。パリからは400kmも離れている国際都市ながら、革命期最大の内乱となった「ヴァンデ戦争」と、それに続いた「ナントの虐殺」が起きた地域です。

ブルジョワのテンプル家の嫡男ローランは、一族が処刑された後、母の御者であったダヴィドに匿われます。そこには、兄とはぐれた貧民の幼い娘コレットもいたのですが、この2人の倒錯した関係が物語の鍵となっていくようです。

ローランの母方の親族で帯剣貴族の嫡男フランソワと従者ピエールは、王党派としてヴァンデ戦争に参加。革命軍に捕らわれたフランソワは、捕虜を廃船に乗せて沈めたというナントの虐殺を生き延びることができたのでしょうか。一方で、コレットの兄ジャン=マリは、港湾労働者としてナントの虐殺と関わっていきます。

第2部の舞台はイギリス。ディケンズ二都物語を意識してしまいますが、著者の構想は「耽美的な罪と罰」に向かっていくとのこと。タイトルの「クロコダイル」からは『ポムレー路地』のワニ人間が思い浮かびますが、それが象徴するものは、死なのか、復讐なのか、いずれにせよ人間性からは遠く離れたもののようです。

2016/11