りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

くれなゐの紐(須賀しのぶ)

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大正末期の浅草で、男子禁制の少女ギャング団に女装して入団した少年・仙太郎の目的は、行方不明になった姉のハルを探すこと。地方の名家へと嫁ぐ前日に自殺を装い、「浅草十二階」こと「凌雲閣」とだけヒントを残して姿を消した姉は、やはり浅草にいるのでしょうか。

少女ギャング団「紅紐団」のメンバーがいいですね。カリスマ性と巧みな戦略で不良少女たちを束ねる男装の美少女・操。売春組を統括する厳しい副団長・倫子。魔法のような化粧術で男を女に変える絹。オペラが大好きな純情花売り娘のあや。どうやら操はハルのことを知っているようなのですが・・。

紅紐団のメンバーたちが助け合い、少年ギャング団や丸の内のエリートOLたちの組織を出し抜いていく様子は痛快です。しかし本書はそれだけでの物語ではありませんでした。仙太郎は、紅紐団の実情を理解していくに連れて、少女たちが皆、痛みを抱えて足掻いていることを知るのです。それは、いつも颯爽としている操や倫子でさえも例外ではありません。そして、意外な形でハルが登場。

彼女たちにしてあげることは何もなく、生きていくことの難しさや哀しさを、己の無力さとともに痛感する仙太郎・・というエンディングなのですが、本書の真のテーマはその後にあるようです。仙太郎が物語の最後になって浅草十二階に刻んだ日付は「大正十二年八月三十一日」。それぞれにドラマを抱えた本書の登場人物たちの人生は、翌日になって唐突に断ち切られてしまったのかもしれないのです。気づかなければ良かった・・。

2016/11