りぼんの読書ノート

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小説フランス革命10 粛清の嵐(佐藤賢一)

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1793年5月31日のパリ蜂起の主役は、貧しい多数派であるサン・キュロットたちから絶大な支持を受ける「デュシェーヌ親爺」ことエベールでした。「精神的な蜂起や道徳的な暴動」を解いてきたロベスピエールも、「人間味あふれる革命家」ダントンも置き去りにして、革命は先鋭化していきます。

フランス軍の国境での苦戦、ヴァンデ内乱の先鋭化、飢えるパリという状況の下では、もはや議員の地位は安全を意味しません。国民公会から追放されたジロンド派は、次いで起こった美貌の修道女・シャルロット・コルディーによるマラ暗殺の背景の黒幕と見なされ、ブリソ、ヴェルニョー、ジャンソネ、ヴァラゼらは処刑されてしまいます。そして、ジロンド派の女帝と言われたロラン夫人も「自由よ、汝の名の下にいかに多くの罪がなされることか」とつぶやきつつ断頭台に・・。このような「粛清の嵐」の中では、マリー・アントワネットの処刑も霞んでしまうほど。

公安委員会による革命独裁、いわゆる「恐怖政治」の始まりです。著者の解釈では、これはロベスピエールらが望んで得た結果ではなく、サン・キュロット圧力で「恐怖政治」に追い込まれたかのようです。さらに、優柔不断のロベスピエールを崇拝しながら煽り立てたサン・ジュストの存在も見逃せません。

キリスト教の廃止」と「理性の崇拝」を推し進めるエベールはやりたい放題。しかし、革命後4年にして既に数少ない「生き残り」となったデムーランとダントンはロベスピエールと組んで、エベールの追い落としを画策しはじめます。一見すると、革命の暴走を抑えるラスト・チャンスのようなのですが・・。「革命の終焉」まであと2巻!

2013/8